ネコ ノ ユウレイ
ヒノワ馨
ユキ
去年の冬、ユキは死んだ。
家の中からいなくなったと思ったら、外で冷たくなっていた。
雪みたいに白い、綺麗なネコだった。
私が小学校に入った年に、赤ちゃんのユキが我が家にやって来た。
私は嬉しくて嬉しくて一生懸命お世話をし、寝る時はいつも一緒だった。
いつも家の中にいるのに、あの日に限って外に出てしまった。
私はずっと悲しくて悲しくて、
ユキのいない部屋はとても寂しかった。
それからしばらくしてから、
私は部屋で鈴の音を聞くようになった。
ユキが首に着けていた鈴の音だ。
音だけではない、
部屋で何かが動く気配がしたり、
足元を何かが撫でるような気がしたり。
最初は気味が悪いと思っていたが、
何だかユキがそばにいてくれているような気がして、段々と平気になっていった。
毎日ユキが見守ってくれているのだと思うと、寂しさも薄れていった。
***
私は中学校にあがり、新たな友達ができた。
トモエちゃんという、大人しいけど、優しい女の子だ。
私たちは、クラスも部活も同じで、いつも一緒にいた。
トモエちゃんのおかげで毎日楽しかった。
ある日、私はトモエちゃんの秘密を知った。
「私ね、霊感があるの」
そのせいで、今まであまり友達ができなかったらしい。
どうして今私に教えてくれたの?
そう聞くと、トモエちゃんは遠慮がちに言った。
「その、気を悪くしないでほしいんだけど、ミサキちゃんにね、ずっとネコの霊が憑いてるの…」
私は驚いた。
ユキの事はトモエちゃんには言っていない。
「や、やっぱり気持ち悪いと思うよね…!悪いものだったらどうしようと思って言ったんだけど、忘れて…」
「全然!凄いよトモエちゃん!」
私は思わずトモエちゃんの手を握った。
「うちで飼ってたネコね、ユキって言うんだけど去年死んじゃって…。でも最近、ユキがそばにいてくれてるんじゃないかと思ってて、だから今トモエちゃんが言ってくれたこと、凄く嬉しい!」
トモエちゃんは安心して、笑顔を見せてくれた。
「よかった…。ユキちゃんって言うんだね」
「そうなの!雪みたいに白いからユキってつけたんだ」
トモエちゃんは私の背後を見つめて、少しだけ驚いたような顔をした。
「ほ、本当だ。可愛いネコちゃんだね」
「そこまでハッキリ見えるんだね!トモエちゃん凄いよ!」
興奮する私をよそに、トモエちゃんは落ち着いていた。
やっぱり見慣れてるから私みたいに興奮したりはしないのだろう。
「う、うん。ありがとう。あっ、私もう行かなきゃ。お母さんにお使い頼まれてたの。先帰るね!」
そう言ってトモエちゃんは駆けて行った。
私はとても幸せな気分だった。
やっぱりユキはずっと一緒にいてくれてたんだ!
明日トモエちゃんにユキの写真を見てもらおう。
そんな事を考えながら帰路についた。
次の日、
トモエちゃんは登校するなり私に封筒を握らせた。
そして、席に着いたきり目を合わせてくれなかった。
封筒には可愛い便箋が入っていた。
私への手紙だった。
***
ミサキちゃんへ
昨日は急に帰ってごめんね
直接お話しすることができないのでお手紙にします
私も最初は、飼ってたネコちゃんがミサキちゃんと一緒にいるのかなと思ってました
でも昨日改めて見てわかりました
ミサキちゃんに憑いてるのは白いネコちゃんじゃありませんでした
嘘ついてごめんなさい
ミサキちゃんには黒いネコが憑いています
たぶんその黒いネコは、ミサキちゃんのネコちゃんのことが羨ましかったんだと思います
そのネコ、白いネコの生首を転がしながらずっと笑ってるの…
ネコ ノ ユウレイ ヒノワ馨 @hiro_n04
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