忘れられるためだけに巻き戻し今を生きるけど、仕事の誇りは憶えていた

SFっぽいホラー。
実験体にされている側の気持ちが、如実に伝わってくる。

代わり映えのしない日常に、些細な変化が加わりながらくり返されていくことで、主人公が何者なのかが断片的にかつ、少しずつ明らかにされていくことで、わからないことがわかっていき、読者に感動を与えていく書き方は思わず唸ってしまう。

ちょっとした違和感をはさみながら物語が進んでいくことで、少しずつ興味が増していく。
似たような日々をくり返しながら、出し惜しみなく書いていくメリハリ感は実にいい。
どんどん引き込まれていく。

記憶をなくしてしまうと、それまで生きてきた実感まで失ってしまうので、自分が分からなくなれば生きていたくないと思うのも当然である。
主人公の彼が可哀想に思えた。