小片仮説「チェック」


 バラエティの罰ゲーム……タライ、わさび寿司、からし入りシュークリーム、ケツバット、タイキック……――それらはコンプライアンス違反とされ、地上波ではその数を減らしていった。

 既にどこからも出ていないのではないか? そう思ってしまうほどに見なくなった。


 痛みを伴う笑いが問題視されている……、もちろん、これが出演者に知らされていないドッキリで、強制的に執行していたら問題だが、受ける側はプロであるし、芸として面白くできる自信があるからこそ実行しているはずだ。

 本人が「大丈夫」と言っているのに、どうしてそれを止め、これまでの伝統を崩し、失くしてしまうのか――見ている側が不快だと言ったからか?


 だとしたら、スポーツはどうなる?

 スポーツ中継はこれまで通りに放送されている。人を殴るスポーツは映していいのか?

「だってスポーツだから」と言うかもしれない。ルールの上で、選手はお互いに了承しているのだから。


 しかし、ならばバラエティもそうなのではないか。

 番組のルールがあり、その上で出演者は了承し、望んで罰ゲームを受けているのに……どうしてスポーツは良くてバラエティはダメなのだ?

 バラエティの演出に不快な思いをする意見は聞き入れ、スポーツに抱く不快感は受け入れない……、どうして?


 なにが違うの?


 なら、スポーツという枠組みの中、その前提の上でタライ落としを利用すれば、コンプライアンスの穴を突けるのか?

 逆にバラエティの罰ゲームの枠として、ボクシングの右ストレートを出演者に食らわせれば放送できるのか? 

 でも、そっちの方が不快だろうし、だからこそ、それぞれが合った場所でこそ真価を発揮する演出は残すべきだ。


 殴る蹴るはスポーツで。

 タライとビンタはバラエティで。


 ……片方を規制するなら片方も規制しなければ、それは差別だ。

 片方を規制したくないなら片方も規制するべきではない。

 どちらかだ。


 中途半端は一番ダメだ。

 その差別こそ、最もコンプライアンスに違反しているのでは?



 …了

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海上から見えた喫茶店 渡貫とゐち @josho

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