ぼくらのキセキ
花ちゃんは奔放だ。
今まで出席確認の時にしか教室にいなかったくせに、次の日からその態度をあっさりと翻意した。どけどけどけえっと喚きながら頭上に机を振り上げてこっちに来たかと思うと、ぼくの机の真横に大きな音を立てて置いた。もともと隣の席だった物静かな女子を「オレ、勉の隣の席にすっから場所交換な?」と強引に移動させる。
「花ちゃん、授業、受けるの?」
目を丸くしたぼくに、ヤツはにやっとした。
「お前に合わせて参加してやんよ」
「えっ」
「気にすんな、オレたちダチだもんな。その代わり体育の授業は一緒にサボろーぜ」
片目を瞑る花ちゃんに、ぼくはやれやれと肩をすくめた。だけど、満更でもない気もしていた。「ダチ」や「一緒に」という言葉の響きが初めて知る新鮮なもので、ちょっとだけこそばゆい感じもして、どうにも心地よかった。
単語帳を川に投げ捨てられようが、不良なダチがいようが、元来ガリ勉なぼくの成績はそう簡単には落ちない。だけど、ぼくの「真面目」は少しずつフェードアウトしていった。当たり前だ。授業を毎時間きっかり受けて、休み時間ですら机から一歩も動かずに参考書を眺めるぼくはもういない。
花ちゃんと付き合うことでぼくはクラスから浮いた。だがほぼ誰も表立って手を出してこないのは花ちゃんが怖いからなのだろう。「てめえ最近ハナビシとつるんでイキってんなあ、ああん?」と絡んできたヤンキーっぽいやつは、駆けつけた花ちゃんが無言で一睨みしただけで逃げていってしまった。そこで仮にそのヤンキーが逆上して襲いかかってきたところで、花ちゃんは拳だけでどうにかしてしまっただろうが。
悪いことをした奴に対して暴力を振るうことを、花ちゃんは制裁と呼ぶ。
性格は何一つ変わらなくても、ぼくの立ち位置やイメージ、行動というものは少しずつ形を変えていった。結局の所「ぼくは変わった」と言えるぐらいに。
意外だったのは、ぼくをこんなにも変化させた花ちゃんを、うちのお母さんが気に入ったことだ。そもそもあの日、青あざだらけのメガネバキバキ状態で壊れた自転車を引きずり家に帰ったぼくは、花ちゃんが助けてくれたこともお母さんに全部話したのだ。だからまあよく考えれば意外でもなんでもないのかもしれないけど。
「花ちゃんさんとつるむようになってから、あんた前より人生楽しそう」
「キッチリカッチリ折り目正しい」がモットーのサラリーマンである父とは対照的で、「のんびりマイペースが吉」をモットーにするフリーターの母はそう言う。なんとなく似たものがあるのかもしれない。一度花ちゃんがうちに来たことがあったが(あいつ休日にいきなり突っ込んできたのだ)、二人ともリビングのテーブルを囲んで終始にこにこと話していた。「ツトムのことよろしくね、この父さん譲りの石頭どうにかしてやって」なんて母は言って、「オレがふにゃふにゃにしてやるっスよ」なんて花ちゃんが応じていた。そのあと花ちゃんは母に勧められるままに家にストックしてある甘食を二十個全部食べてしまった。ぼくの好物なのに。
暑いほどに太陽が近く感じられる屋上で、ぼくらはいつも昼休みを過ごした。雨の日は屋上に出る扉の前の階段を登ったところ。花ちゃんは高いところが好きであるらしかった。ちょっとした段差の上にもぴょんと跳び乗る。なんだか小さい子供か猫みたいだ。陽の光を照り返す床の上でお弁当をつつきながら、花ちゃんは周りの話す自分に関する噂についてバカバカしいと笑う。
「じゃあお父さんが〈西部華火師会〉の理事長で暴力的なヤクザだっていうのは嘘なの?」
ぼくが訊いたら、花ちゃんは斜め上の辺りを見るようにして「あー、いや、完全なデマでもないのかな」と首を傾げた。
「親父は〈華火師会〉のメンバーだし、まあヤクザではあるんじゃね? でも別に立場はヒラだな。今はどうだか知らねえけど。〈華火師〉ってのは多分借金の取り立てのときに放火って手段を使うからそっから来てんだな。苗字は関係ねえ」
放火、ですか。最近の付き合いで、反応に困る語に関してはスルーすることに決めているぼくは「じゃあお母さんは?」と訊ねてみた。花ちゃんは大きめの卵焼きを一口で飲み込んで「おふくろ?」と瞬きをする。
「死んだよ」
「えっ」
「オレがほんのこんくらいのガキのときに。交通事故だな」
こんくらい、といいながら人差し指と親指でつくった隙間がたった二ミリぐらいしかないのはさておき、ちょっと悪いことを訊いてしまったなとぼくは後悔する。やっぱりなんでもかんでもズケズケ踏み込んでいくのは良くない。そもそもぼくは噂を鵜呑みになんてしていなかっただろ?
黙りこくったぼくを花ちゃんは見遣って、「気にすることねえ」とちょっと口角を上げた。
「親父のこともおふくろのことも、オレにとっちゃどうでもいいことさ。オレは過去の誰とも違う人間になるんだからな」
「……」
「それに親父とはもう縁切ったも同然よ、オレ今絶賛一人暮らし中だぜ?」
それは初耳だ。ああ、でもお母さんがいなくてお父さんがヤクザじゃあ一緒に住んでても結局同じようなものか。よく考えてみれば今食べてる手作りっぽい美味しそうなお弁当は全部自作なんですか。大きい卵焼きも、スナップエンドウの和え物も、いい感じに色づいた鳥焼きも、全部自分で? 知れば知るほど花ちゃんは意外な面を持っていることがわかってくる。人柄が見えてくる。
それがちょっと、嬉しい。
花ちゃんのただ一人のダチである、ぼくだけが知っている花ちゃん。他の誰にも教えたくないな。そう思うのもまた、最近になってから発見した少しだけ自分勝手なぼくだ。
一ヶ月が経った。
雨降りの帰り道、ぼくたちは初めての喧嘩をした。
と言っても始めから雨降りだったわけではないのか──部活動というものに属さないぼくらがいつもどおりに時間を持て余しつつのんびりと家の方向へ向かって歩いていたら、突然に降ってきたのだ。そしてあれよあれよという間に遠くが白く烟って見えなくなるくらいに勢いを増していった。
「なんだこりゃ、仕方ねえな」
手の甲を額に当てるようにして雨空を見上げた花ちゃんに、ぼくは雨宿りを提案した。川沿いを通り抜けたぼくらは街の方へと入っていたから、入れる屋根はいくらでもあった。適当な定休日らしいシャッターを降ろされた店のビニール屋根の下に駆け込む。
錆びたシャッターを背に、雨の街を眺める花ちゃんの横顔を、ぼくは見ていた。頬に新しくできた青痣があって、濡れた髪と透き通るように青ざめたそれのせいか花ちゃんはこの世のものではないみたいに綺麗に見えた。すぐ近くにいるのに遠いもののように感じられて、それが不安だった。
「また喧嘩したの?」
訊ねたぼくに、花ちゃんは「ああ」と答えて、左頬の痣に軽く手をやる。
「喧嘩じゃねえ、制裁だ。向こうの三年が先輩だからって一年のガキをパシらせてたから、おかしいんじゃねえのってハナシをしてやっただけだよ。そんときにちょっと向こうの手が当たったわけだけど、別に大したことは」
「……花ちゃんはもう少し自分を大事にするべきだよ」
ぼくは静かに反駁した。花ちゃんは虚を突かれたように目を丸くした。「急にどした?」
どうしたもこうしたもない。ぼくに対してこんなに優しい花ちゃんが、力で「制裁」を下すたびに自分の知らない人間になるようで怖かっただけだ。冷静になればそんなわけないとわかるのに。
「制裁制裁って言うけどさ、そんなのは言い訳で結局ただの暴力じゃん。それで自分まで殴られて、痛いのも誤魔化してバカみたい」
表情を強張らせて絶句した花ちゃんに、ぼくはこれでもかと言い募った。駄目だって自分でも思うのに、歯止めが効かなくなっていた。「そんなだから」
「そんなだから、花ちゃんは孤立したんだよ。誰も仲間になんてなってくれなかったんだ。一匹狼だなんて言いながら、実は寂しかったんだろ? だから助けてやったぼくにダチだなんて言ったんだ。花ちゃんは──」
ぼくは自分の言葉に泣きそうになりながら、言った。
「誰でも良かったんだ。友達が手に入るなら、ぼくじゃなくても」
いつの間にか弱くなってきた雨が、静かに降っていた。薄暗い空に上から押さえられたように俯いていた花ちゃんが、何か低い声で呟いた。ぼくが聞き返す前に、もう一度もっと強く怒鳴る。
「ふざけんじゃねえっ!!」
花ちゃんの右手が鋭く動いた。鼻先に巻き込まれた一陣の風が触れる。殴られる、ああでもぼくはそれほどに酷いことを言ったんだ。ぎゅっと目を瞑って身を固くしたぼくに、しかし強い拳がぶつかることはなかった。恐る恐る目を開ける。花ちゃんがゆっくりと手を下ろすところだった。殴られなかった。寸止めだ。花ちゃんはぼくを殴らなかった。
「勉、お前は変わったな」
らしくもなく地面を睨みつけたままだった花ちゃんは、感情の滲まない声でそれだけ言って、ビニール屋根の下を出ていった。「待ってよ、ごめん。ねえ花ちゃん!」叫んだぼくの遅すぎる言葉は、誰にも届くことなく──届いてほしい人に届くことなく霧雨の中に吸い込まれて消えた。
たった一ヶ月。ぼくは初めてできた友達を失ったのだと思った。
✵
数日の間を、前に戻ってしまったみたいにして過ごした。
ぼくの隣の席はもとからそうだったみたいに空っぽで、ぼくは自分のから一歩たりとも動くことなく開いた参考書に目を落としてぼんやりとして。これが普通なのだ、と思った。ぼくは一人で、世界はこの机の上だけに完結していて、これが当たり前。
平和でいいじゃないか。うるさくもないし。
でもどうしようもなくこの頼りなさに気付いてしまっている自分もいた。ただ一度眩しくて暖かい光に触れてしまったがために、もう完全にはもとに戻れないことを悟っている自分がいた。困ったな、まるで呪いだ。一度かけられただけで一生跡を引く。
騒がしくていつもどおりな教室の一角。
惨めさと孤独さを有耶無耶にしようと足掻いていたぼくに、その機会は突然にやってきた。授業を終えて帰ろうと学校を出た時、耳が誰かの言葉を捉えた。
──二年A組のハナビシってやつが、めっちゃ河原で揉めてんだけど。先生か誰か呼んだ方がいいレベル。
えっ、とぼくは振り向いた。河原の方からまたここまで戻ってきたらしい三年の先輩が、偶然会ったらしい友達らしき人に話している。
「まじで?」友達側は面白がっているようだ。「誰と? ハナビシがボコってるわけ?」
「相手側……名前はわからないなあ、でも問題児だって結構有名なやつ。ちょっと髪伸ばしてカラコン入れてるの。そいつがメインでめちゃくちゃにハナビシを殴りまくってるの」
「河原の、どっちの方でですかっっ⁉」
気付いたら、勢い込んで訊いていた。花ちゃんがやられている⁉ そんな馬鹿なことあるものか。でもその「ちょっと髪伸ばしてカラコン入れてる」やつを、ぼくは知っている。あの日自転車に傷がついたとかでぼくに因縁をつけてきた「トミシマくん」だ。それじゃあもしかして。
花ちゃんが今奴らに囲まれているのはぼくのせい?
ぼくを助けるために、結果として奴らのメンツを潰したせい?
先輩たちは怪訝そうに眉を潜めた。「下流の方だけど。結構海に近いところ」それ訊いてどうするの? と言外に言われているのがわかった。だけど構っていられるか。──行かなきゃ。
「ありがとうございます!」ぼくは叫んで、走り出した。
花ちゃんたちのもとへとたどり着いた時、ぼくは既に体力の消耗でボロボロだった。背負っていた荷物は既にどこかに投げ出してきてしまったし、メガネは傾き、それでなくても真っ直ぐに立っていられない。口を開けばぜえぜえという自分の呼吸音だけが溢れ出す。
もうじき沈む夕日に照らされる河川敷は、こんな時なのに信じられないほど美しかった。ぼくは歯を食いしばって、風圧のせいで滲んだ涙を押える。
眼科の河原の草原で、五人ぐらいが揉み合っている。一対四の図がありありと見て取れた。二人がかりで花ちゃんを押さえつけ、残る二人──片方は「トミシマくん」だ──が花ちゃんに殴りかかっていた。負けているし、どう見たって多勢に無勢だ。なのに、花ちゃんはまだ立っている。拳と足の攻撃によろめきながら、顔は腫れ上がって髪はぐしゃぐしゃになっていながら、それでも自分の足で立って全力で抵抗していた。花ちゃんの繰り出したパンチが「トミシマくん」の肩に当たる。この野郎、まだ諦めねえのかよ……っ。そんな歪んだ顔で花ちゃんを殴り続ける相手側にも体力と精神の疲労が見て取れる。相手の小柄な男の蹴りが花ちゃんの脇腹あたりをかする。それでも花ちゃんはまだ倒れない。ぎりぎり倒れない。
あそこで今一人で戦っているのが──、
──ぼくの、ダチ。
ぼくは必死で駆け寄っていった。河川敷の下り坂を駆け下りる。転げ落ちる、と言ったほうが正しいかもしれない。うわあああああああっっと自分でも何を言っているのかわからない声が溢れ出していた。そのまま五人のもとへと突っ込んでいこうとして、やめる。揉み合っている場所から約五メートルぐらいの場所に、「トミシマくん」たちが持ってきたらしい金属製のバットが無造作に落ちていた。大方花ちゃんに弾き飛ばされるか何かしてそのままになっているのだろう。争いの只中に目を遣った。ぼくみたいな華奢で無力なやつが加勢したってなんにもならない。寧ろ花ちゃんの足を引っ張ることになるだろう。でもこのバットがあれば……?
勝てる。
そう思ってバットを拾おうとしゃがみかけた時、前の花ちゃん言葉が思い浮かんだ。
『人に痛みを与えるなら、殴る自分もそれなりの痛みを感じるべきだ。やっぱ素手じゃなきゃな』
っっ……花ちゃん花ちゃん花ちゃん。今花ちゃんは一方的にやられてる。ぼくが加わったって変わらない。それでも、あなたはそれでも痛みを感じろと言うのかな。
投げ出されたバットをぼくは軽く蹴った。どうでもいい方向にちょっとだけ転がって、すぐに止まっただろう。それを確認する間もなくぼくは今度こそ花ちゃんのいるところに飛び込んでいって、「やめろおっ!」と出せる限りの声で怒鳴った。
「うわっ、ぐるぐるメガネだ」
「てめえがそんなイキったってなんにもこっちは怖くねえんだよっ」
「トミシマくん」たちは突然入ってきたぼくに軽くぎょっとしたらしかったが、大して焦りの見えない顔をする。それでもいい。唇の端が切れて頬は泥まみれの花ちゃんが「勉⁉」と声を上げる。それだけでいい。
「なんできたんだよ、お前──」
「花ちゃんはぼくのことを助けてくれただけで、なんにも悪くないんだよっ。恨むならぼくにしとけって言うのは怖いから無理だけどとりあえずあの、えーっと……その……」
ぼくは一度首を傾げて、それから頷いた。
「ダチなので、来てみました」
結果は惨敗。もちろんぼくも花ちゃんもあっと言う間にボコボコにされ、ぼくは情けなく芝生の上に倒れた。花ちゃんはそれでも尚立っていて、「トミシマくん」たちは花ちゃんを完全に伸すことは諦めたのか「今日はこの辺でやめといてやるから感謝しろ!」的な捨て台詞を残して走っていった。そういう意味じゃぼくたちは(というか花ちゃんは)負けじゃなかったのかもしれないけど。
「立て」
花ちゃんはいつかと同じように言った。違うのは、今回は花ちゃん自身もまた満身創痍であることだ。なのに手を差し伸べる。ぼくのよりも小さな手だ。ぼくも気力だけでその手を借りずに立ち上がる。
「歩くぞ、海まで行こう」
「うん」
ゆっくりとゆっくりと時間を掛けて、よろめきながら、ふらつきながら、ぼくらは歩いた。砂浜でぼくらは力尽きて大の字になって仰向けに横たわった。
「疲れたな、勉」
「そうだね」
「今日はひでえ目にあったな、災難災難」
「そうだねえ……」
夕陽の半分はもう水平線の下へと潜り、真正面の空とは対照的に反対側の空には深い藍が広がりだしている。
殴られたところは痛くて、見上げた闇は淡いが底なしのようで、だけどそれ以上に背にした砂浜が温かかった。波の音を振動で感じていた。緩い風が打ち身を少しずつ冷やしていった。悪くない日だと思った。
「花ちゃん……
ぼくは上を見上げたまま隣に呼びかける。花ちゃんの表情はわからなかったが、どうやら少し驚いたらしい。「むあ?」と変な声を発した。「なんだよ、急に改まって」
「花ちゃんがどう思ってるかわかんないけど、ぼくは誰でも良くないんだ。やっぱり花ちゃんじゃなきゃ駄目なんだよ」
「……」
「こんなに強くて格好良くて優しい女の子をダチって言えるだけで、ぼくはちょっと自分に自信が持てるんだ。これからも花ちゃんと友達でいたいよ」
花ちゃんは黙りこくった。ややあって「この間」と言う。
「この間お前に友達が欲しかっただけなんだろって言われて、自分でも何考えてるんだかわかんなくなって焦った。でも今ははっきり言える。オレはお前がいいんだ」
よっと声を上げて、花ちゃんが起き上がった。ぼくもつられたように上半身を起こす。「痛いなあ」と顔をしかめながら二人で笑った。花ちゃんのボサボサになった長い髪が海風にゆっくりと靡いていた。
「見ろよ、勉。水平線がシルエットになって見えるぜ」
空とは確かに違う色の線が、遠くで緩やかに弧を描いていた。花ちゃんは汚れた顔をくしゃっとさせて笑った。
「っせえなあ」
そう呟く。今のは「小さい→ちっさい→ちっせえ→っせえ」の「っせえなあ」だ。わかる。だってぼくも同じことを考えていたからだ。水平線のカーブは、僕らの惑星の輪郭線は、意外とはっきりと見えていた。くっきりとカーブしていた。案外、思っているよりも地球って小さいのかもしれない。少なくとも今はそう見えた。
「っせえって端折り過ぎでしょ……」
「っせえ」
「ていうか前から思ってたけどなんで一人称オレなの」
「っせえ。なんか文句あんのかー?」
ぼくは笑う。「ないよ、なんにも」
ぼくらの滅茶苦茶で楽しい日々は、これからだって続いていくだろう。ぼくはまだまだ触れたことのない世界をいくつも見ていくのだろう。花ちゃんが言った通り、きっとぼくは今少しずつ変わっていて、そして変わり続けていく。
波が打ち寄せて、それから引いていく。
ねえ花ちゃん、ぼくの知らない君がいたってもう怖くないよ。でもそばにいてほしいと思うよ。ぼくを知っている君でいてね。
帰ろっか、とぼくは言って先に立ち上がった。太陽の放つ最後の残灯が静かに消えていくのを見届けて、海に背を向けた。
ラジカルデイズ!! 蘇芳ぽかり @magatsume
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます