第2話

 なにも出来ないまま、なにもする気も起きないまま城の出口まで連れてこられてしまった。

 2人の屈強な男にポトンと立たされずっと持っていた剣をスルっと取られ、代わりに何か金属が入った布袋を2つ渡される。

 そのまま扉が閉まる。

 目の前にはただデカい扉。

 後ろには石畳で整備された大きな道ですぐ前には大きな噴水がありそれを囲むようなロータリー式になっていて、奥はただ城の敷地への入り口がある。

「・・・」

 で俺はなにをすればいいんだ?

 さっき貰った布袋の中身を確認すると、金銀銅の三色のメダルか硬貨が入っている、これがこの場所の通貨なのだろうか?

 まあ訳も分からんまま放り投げられた訳だし、とりあえずは周辺の調査から始めよう。

 これがもしゲームとかならまずは始めるべきは現状確認からだろう。

 城の外は町に見えるので、きっとどこかに食事処だったり居酒屋があるだろう、そういったところにいれば人もいるだろうし、酔ってればなんでも喋ってくれる人もいるだろうし。

 それと硬貨っぽいこれの内訳を確認しておこう。

 そう考えて噴水の縁に種類ごとに並べていたとき、奥から入ってくる一団が見えた。

 あからさまに胸の部分が膨らんでる鎧を着ている人を先頭に約10数名、どこかに遠征に行っていた兵士達で仕事の報告に来たのだろうか?

 相変わらず凝っていてとてもいい。

 まあ自分には関係のないことなのでまったく興味ないが。

 金が12枚、銀が18枚、銅が30枚。

 うんわからん。

 とりあえず何か物を買ってみないことには分からない、これが通貨だとして銅硬貨一枚での価値、価額が分からない。

 とりあえず半分ずつ袋に戻す、そのころには鎧の一団が近くに来ていて。

 てか近すぎない?俺の行動が不審すぎただろうか?

「またか」

「ん?」

 女性っぽい声と胸らへんが膨らんだ鎧を着ている長身が兜の中からこちらを見てくるので、『え?俺なに?やばい?逃げた方がいい?』等と考えていると。

 まるで赤子を持つように抱えられて肩に担がれる。

 嘘だろ、どんだけ馬鹿力なんだよ。

 そのまままた城の中に戻る。

 俺を担いだ人が誰か分からないが、後ろにいた人達は1人を除いて解散していった。

 残っている1人は俺より少し小さいくらいの伸長で、これまた女性用と思われる鎧を身に着けていて、兜の隙間から目がこちらを捉えているのが分かる。

 このままあの王様っぽい人がいたところに戻るのかなと思っていたのだが、途中で別の通路に入りまったく違う部屋に入る。

 高級ホテルみたいに広い部屋、レースの飾られてるお姫様ベッド、応接セットのようなものもあり、まじで広いなんだこれ。

 もう世界観がわからん。

 ゲームじゃないのか?アトラクションでもないのか?俺はなんだ?どっかの王国にでも密入国しちゃったのか?

 大雑把にソファに放り投げられる、ずっとこんな扱いばっかりされてる気がする。

 鎧女が兜をとると長い朱色の髪がめっちゃ似合うめっちゃ美人が現れる、顔の真ん中にでかい切り傷があるがそれでも美人だ。

 そのまま鎧も中に来ていた鎖帷子も脱ぎ捨てていき、もう下着姿のような感じになっている。

 そのまま俺の目の前の椅子に大の字に座る。

 目線に困りすぎるのでもう一人の鎧女に目を向けると、こっちもいつの間にか兜を取っていてそこには可愛い黒髪美少女が立っていた。

 美女しかいないかもしれないこの国。

 そいつはさぞかし素晴らしい国だ。

 服を着るように言ってもらえないかと視線を送るがキッとした目で睨まれ、こちらの意思は伝わらないし、なぜか敵視されてる、気がする。

「ふぅ、すまないな鎧は重くて好かないのでな、この格好で許してほしい」

 許すも何も、貴女のプロポーションてきに眼福眼福なのですけども!

 いいんですか!

 出ているのに出すぎず、締まるとこはしまっていて、筋肉がまたいい感じに・・・。

「私はシャーロット・ファイス、この国の第一王女だ、お前はなんという?」

「名前ですか・・・名前」

 名前はなんだっけ。

 佐藤?鈴木?高橋?

 自分が日本人でごく普通の一般人で、爺ちゃんが道場をやっていて、父と母は覚えてない。

 俺自身は覚えてない。

 記憶喪失なんだろうか。

 でも知識という面では覚えているし九九もできる7749。

 親も友達も好きだった人も、すべて居たのかすら怪しいくらい覚えていない。

 俺は誰だ。

「どうした?」

「えっとですね・・・」

 覚えてない、記憶無し、名前なし、何もない、ゼロの人間。

「ではセロで」

「ん?その言い方は偽名か?」

「いえ、覚えてないので今考えました」

「記憶喪失か…、やはり魔法陣の限界が近いんじゃないか。どう思うアリス」

 黒髪美少女アリスはハッキリとした活舌で小さく口を開く。

「前回からの期間も短く、歴史を遡ってもこの召喚数は類を見ないほど多いため召喚術自体に無理が来ているのではないかと思います」

「私も同意見だ、ここ数期を見ても多すぎる、それに今日は2人で1人は当たりだったんだろう?その反動が彼にきてる可能性は大いにあるだろうな、ついてないなセロ」

 慰めてないですし、慰めてもないですよねそれ。

「とはいえだ、君の不幸や被害に対して私達にできるとこはあまりなくてな、城を出て右に行くと教会がある、そこに行くといい、それくらいだ」

 …それくらい?それだけ?

 なんか強い武器くれたりするんじゃないん?初心者特典みたいなのは無いですよねって分かってるけど期待はしてしまうよねって。

「あとはこうして我等と面通しをしておくようにするくらいか・・・ではな、上手くやれよ」

 姫様はそう言葉を残しベッドに身を放ると、アリスが近づいてきて俺を担ぐ。

 まじ?その身体のどこにそんな筋力あるん?鎧の下はビックリするくらいムキムキなのか?

 そのまま城の外まで運ばれ。

「頑張りなさい、少しは応援してますわ」

 言葉を最後に扉は閉められた。

 結局今回の話の最初と同じ場面になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

違う僕らの武勇伝 安心院りつ @Azimuritu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ