違う僕らの武勇伝

安心院りつ

第1話

 目を覚ますと自分が冷たい何かの上に横たわっているのがわかる。

 周りには微発光してる模様を囲うように柱がたっていて、その柱に隠れる女の子がいて、部屋はテニスコートを円形にしたくらい広くて。

 どこでしょうかねここは。

 女の子は金髪?プロンド?な髪だから外国かな?

 いつのまに?

「あの、すいません」

 女の子が近寄ってきたのでそちらを向く。

 くすんだ金ような髪と緑色の瞳、整った顔立ちに残る幼さはタレ目とかのせいだろうか。

 日本語だけど日本人では無さそうだ。

「貴方が起きたら一緒に登ってこいと…」

 彼女が指差す先には部屋の出入口、てかよく見れば部屋は石で造られてるし、明かりも全て壁にある松明だ。

 そこから導き出す答えはここはどこかのアトラクション?

 だとしたらどうやってここまで来たのか、ここに来る前は何をしていたのか。

 まったく思い出せないけどまあ行ってみますか。

 一言軽く返事をして立ち上がり進もうをすると、くいっと袖を引っ張られたので見る。

「ごめんなさい、怖いからこうやってついてってもいいですか?」

 可愛いかよ。

 断る理由は無い。

 これは可愛い子と手を繋ぐチャンスと普通に手を握る。

「いいよ、行こっか」

 部屋の外はただ大きい階段が続いているだけだった、明かりも松明で照らされているだけで薄暗く不気味に見える。

 だが今はそれよりも俺の左手が幸せだ。

 あはー。こんな美少女と手を繋いで歩くとかメッチャ幸せじゃん、学生の時とかから考えても…。

 ゆっくりと階段を登って行く2人分の足音が俺に警笛を鳴らしているように心臓が高鳴っていく。

 俺は誰だ?

 地球の日本で生まれて、今年は大学を卒業するくらいの年齢で、友達も家族も思い出せない。

「ひゃっ」

 声とともに手を引っ張られて少し姿勢を低くする。

「あれ見てください」

 あと数段で終える階段の先は少し広くなっていてそこに大型犬サイズのネズミのような化物がいた。

 しかもお誂えのように2本の剣が目の前に落ちている。

 倒せってことか?これで。

「あの剣で倒せってことかな?」

「そうなのでしょうか?でも私...」

 握っている手が震え恐怖が振動として伝わってくる。

 ここは漢を魅せるしかないか。

「よし、どうにかしてみるから君はここで待っててね」

「気をつけてくださいね」

 大型犬サイズだけど相手はネズミだしこっちには武器があれば、重。

 おっも剣って重いの?漫画とかだとめっちゃ軽そうに振り回してるやん。

 アトラクション用にしてはずいぶんと凝っている、現実主義なのかな。

 剣を2本拾って二刀流は出来なく、両手でしっかりと一本の剣を剣道の上段構えで持つ。

 ゆっくりと近づいていく、耳がチラチラとこっちに動いたりしてるから俺のことは気付いてる、それでもすぐにこっちにこないのは何かを食べているからだろう。

 ここからだと何を食べてるのか見えないが、なんかの肉なのは間違いない。

10mくらいまで近づいたとこでネズミはこちらにキシャーッと明らかな敵意を向けてきた。

 鼻をピクピクさせてこっちを嗅ぎながらゆっくり来た、と思ったら途中から口をあけながら全力突進してきた。

 避ける?無理無理。

 逃げる?無理無理。

 驚きながら俺は無心でただただ剣を振るだけで精一杯だった。

 それがたまたま頭にクリーンヒットして、それでも勢いは死んでなくて、そのまま俺にぶつかって倒れて、涎と血がこびりついた牙を目の前に咄嗟に口めがけて剣を突き刺した。

 血を吹き出しながら大型ネズミは倒れた。

 漫画とかだと戦闘の寸前とかで秘められた能力が出現、みたいなシチュエーションが多いけど現実はこんなもんなのだろうか。

 な~にが「よし、どうにかしてみるから君はここで待っててね」だよカッコ悪いにも程があるだろ、服は血だらけだし臭いし。

 ・・・本物の血?

「大丈夫ですか!?」

 駆け寄ってきてはすぐに俺の体のあちこちを見て触って、自分の手もネズミの血で汚れようと服がどうなろうとも、俺の顔についた血を袖で拭ってくれる。

 可愛いかよ。

「なんとか、大丈夫だよ」

「ごめんなさい、私も戦えたらいいんですけど...」

「えっいや!気にしないで!俺だって戦いっていえるようなもんじゃなかったし、たまたま運が良かったんだよ」

「だとしてもお兄さんが戦ってるのを私は見てることしか出来ませんでした」

 なんだ、そこに何かトラウマ的なものでもあるのかってくらい暗くないか?

 別に気にしないでほしいし、カッコ悪いとこ見せたの忘れてほしいし、ぐずってほしくないし、あとなんだこのデッカイネズミはさ。

「君は悪くないよ、だから進も?ここで止まっててもしょうがないしね」

「はい」

 立ち上がり手を差し出すとさっきと同じように掴んでくれるが、しぶしぶといった風に見える、手をつなぐのはダメだっただろうか。

 でも可愛いんだもん。

 そのあとは可愛い女の子とただただ階段を上って行った。

 いったいここはどこでどんな場所なのかまったく分からないけど、ひたすらに石でこんだけの階段を造り上げるのは大変だっただろうなと、昔の人の働きに関心しながら上っていく。

 残念ながらその間はまったく会話はなかった、

 はぁはぁ、とすぐ後ろで女の子の吐息が聞こえてきたころ、ついに俺達はゴールにたどり着いた。

 両開きの扉を開くとそこには実際に見たことはないけどなんかゲームとかで見たころあるような気がする感じのTHE王城の謁見の間みたいなところに出た。

「男の方はいらぬ、外に捨てておけ」

 何言ってんだ?あの爺さんとか思ってる間に、ガシっと両腕を甲冑を着た大男に抱えられ繋いでいた手も離される。

「なんだ?いきなり?」

 そのまま考える時間もあたえられず、ずるずると引きずられていく。

「え?あっまって」

 と小さい声が聞こえたが俺を運ぶ屈強な男共は止まることなく、そのまま謁見の間(?)を通り抜けまっすぐ進む。

「で?どうなるん?俺」

 問いかけてみたがどちらも無言でまっすぐ歩いていくだけだった。

 え?まじで俺今からどうなるんだ?長くないか?シナリオ。

 せめてすぐにシャワーを浴びさせてほしい。

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