夏の日差しより眩しかった(標準語バージョン)

Danzig

第1話

登場人物

樋口 可奈(ひぐち かな)

波多野 充(はたの みつる)


可奈(M):8月11日、

可奈(M):駅のアナウンスが流れる雑踏の中

可奈(M):私は新幹線を降りた。


可奈(M):ここは、東海道新幹線、新大阪駅

可奈(M):私の故郷だ、

可奈(M):お盆という事もあって、大きな荷物を持った家族連れや、

可奈(M):親族を迎える人の姿で、駅全体がごった返している。


可奈(M):東京から東海道新幹線で約二時間半。

可奈(M):こんなに近い場所なのに、帰ってくるのは5年ぶりかぁ・・


充:可奈が帰ってくるんですか?


可奈の母:そうなのよ、あの子が帰ってくるのは5年ぶりかしらね、みっちゃん、あの子の顔見たら声かけてやってね


充:へえ、なんだか、懐かしいなぁ


充(M):樋口可奈(ひぐち かな)は、俺の幼馴染(おさななじみ)

充(M):大阪の高校から、東京の大学に進学して、そのまま東京で就職をした。

充(M):大学時代に2度ほど、こっちに帰ってきたが、それから5年間帰ってくる事はなかった。



可奈(M):駅を出ると、目の前には日差しに照らされた街が広がる

可奈(M):この、昼間のジメジメした暑さは、多分、東京よりも不快指数は高めだ

可奈(M):そういえば、大阪の暑さってこうだったわ


可奈(M):駅からバスで実家に帰る

可奈(M):バス停から少し歩くと、私の実家がある

可奈(M):見慣れたはずの実家

可奈(M):それすらも、何だか懐かしく感じる

可奈(M):たったの5年なのに・・・



可奈:ただいまぁ


可奈の母:あぁ、お帰り。 どうなの?


可奈:まぁ、ぼちぼちね


可奈(M):家族は5年間の空白なんて、何もなかったかのように、私を出迎えてくれた

可奈(M):私の部屋も、5年前のまま

可奈(M):いや、5年前というよりは、高校時代のままだった。

可奈(M):勉強机も、ベッドも、アイドルのポスターも

可奈(M):全てがあの頃のまま・・・

可奈(M):それが少しホッとする。



充(M):俺と可奈の出会いは幼稚園にまで、さかのぼる

充(M):幼稚園で出会った俺達は

充(M):家が直ぐ近所という事もあって、何をするにも、いつも一緒だった



可奈(M):その日の夕食、お母さんは、いつものハモ鍋とサバの味噌煮を作ってくれた。

可奈(M):東京で食べるものとは、全然違う、私の大好きな料理。

可奈(M):お母さんの手作りの料理を食べながら、

可奈(M):私は両親から、東京の生活について、質問攻めにあった。

可奈(M):流石に5年も帰らないと、そうなるよねぇ・・・

可奈(M):そして、話の中で・・・


可奈の母:可奈、

可奈の母:そういえば、今日、商店街で、みっちゃんにあったわよ

可奈の母:みっちゃん、お前の事、懐かしがってたよ


可奈:お母さん、私の事、みっちゃんに話したの?

可奈:もう・・なんでよぉ


可奈の母:なんでって・・いいじゃないの

可奈の母:でも、近所なんだから、顔くらい見るわよ

可奈の母:ずっと家の中にいる訳じゃないんでしょ


可奈:そ、そりゃ、そうかもだけど・・・



可奈(M):波多野充(はたの みつる)は、私の幼稚園からの幼馴染。

可奈(M):その頃から、彼の事をみっちゃんって呼んでいる。

可奈(M):みっちゃんとは、高校まで一緒の学校だった。

可奈(M):でも、一度も恋愛関係になった事はなかったなぁ・・・

可奈(M):どちらかというと、大切な仲間という関係だった



可奈:でも、今はみっちゃんに会いたくないなぁ・・・


可奈(M):私はベッドの中で、見慣れた天井を眺めながら、そう思っていた。



充(M):次の日の金曜日、

充(M):俺は会社がお盆休みに入ったので

充(M):晩酌(ばんしゃく)用の酒と、つまみを買いに、商店街の酒屋に行った。

充(M):すると、その酒屋には、可奈と可奈の母親が来ていた。


充:よう、可奈


可奈:あぁ・・みっちゃん


充:なんだ、久しぶりだな、元気にしてたか?


可奈:ま・・まぁね、みっちゃんは?


充:おれが病気にみえるか?

充:元気にきまってるだろ、百人乗っても大丈夫だ


可奈:そういう所、変わらないわね


充:お前のマジレスも、相変わらずだな・・・


可奈:何言ってるのよ、もう・・・


充:ところで、何してるの? こんなところで


可奈:ちょっと聞いてよ

可奈:レモンチューハイの買い出し頼まれたのよ

可奈:久しぶりに帰ってきたか弱い娘なのに、ホント、人使い荒いわ


可奈の母:何言ってるのよ、あんた、お客さんじゃないのよ、まったく。

可奈の母:あ、そうだ。 みっちゃん、ちょうどよかったわ


充:何がですか?


可奈の母:みっちゃんも、お酒買って帰るんでしょ?

可奈の母:だったら、私の分持って、可奈と帰ってくれる

可奈の母:私、もう一軒行きたいとこがあるから


充:おばさん、やっぱり、人使い荒いわ


可奈の母:いいじゃない、

可奈の母:あ、それと、可奈をどっか連れてってあげて


可奈:もう、お母さん!

可奈:余計な事言わないでよ

可奈:私にだって予定があるんだから!


可奈の母:じゃぁ、みっちゃん、頼んだわね


可奈:結局、みっちゃんは、私のお母さんに、袋一杯のチューハイを持たされ

可奈:私の家まで運んでくれる事になった。

可奈:そして、その帰り道・・・


充:可奈、お前、予定があるのか?


可奈:え・・・いや・・別に・・・ない・・・けど・・


充:高校時代の奴らと会う約束とか、ないのか?


可奈:今回は連絡してない・・し


充:そっか

充:じゃぁ、帰って荷物置いたら、海遊館行かないか?


可奈:えー、 マジで行くの?


充:ジンベエザメ見ようよ


可奈:べ、別いいいけど・・・


充:よし、じゃぁ、決まりだな


可奈(M):そして私達は、電車にのって海遊館に出かける事になった。

可奈(M):電車の中で、みっちゃんが、いろいろ話しかけてくれていたけど、

可奈(M):私は他の事を考えてて、殆ど耳に入っていなかった。




充(M):海遊館では、いろんなイベントが催(もよう)されていた。

充(M):お盆休みなだけに、人は多かったが、海遊館の中は涼しく

充(M):いろんな魚が見れて、楽しい。

充(M):中でも、やっぱり、ジンベイザメが一番興奮(こうふん)する。


充:俺は楽しいけど、可奈は楽しんでいるだろうか・・・。


可奈(M):ジンベイザメを見る、みっちゃんの顔は、まるで子供みたいだった

可奈(M):中学や高校時代に見ていた、みっちゃんの顔が、ふと浮かんで来た

可奈(M):みっちゃんは変わらないんだなぁ・・・


可奈(M):海遊館を出た私達は、大観覧車に乗る事にした。

可奈(M):世界最大級といわれる、大きな観覧車。

可奈(M):この日は天気がよかったから、明石海峡大橋(あかし かいきょう おおはし)や、関西国際空港まで見える。

可奈(M):普段なら、気持ちが浮きたつだろう、こんな風景でも、私は他の事を考えていた。


可奈:そんな時


充:どうした?

充:暗い顔して


可奈:え?

可奈:私、そんな顔してた?


充:あぁ、してたよ

充:この風景に、どんなボケをかまそうか、悩んでる顔だった


可奈:そうかなぁ


充:お前のマジレスは、相変わらずキツイな・・


可奈:・・・・


充:で、何かあったのか?


可奈:え?


充:何があったかって聞いてんだよ


可奈:ううん、別に何にもないよ


充:そっか・・・


可奈:うん


可奈(M):私から目線を外し、外の眺望(ちょうぼう)を見ながら、みっちゃんが言う


充:この景色、

充:お前には、もう懐かしい風景なんだろうな


可奈:そうね、懐かしいと思っちゃう


充:可奈は東京に行って、変わっちゃったのかね


可奈:変わっちゃったって、何よ

可奈:別に東京っていうより、

可奈:大人になれば、変わるでしょ、普通


充:まぁそうだな


可奈:そうよ、何言ってるの


充:でもさ

充:お前には、昔から変わらない癖が一つあるんだよ、知ってるか?


可奈:私の癖?


充:そう


可奈:何それ?


充:そういうのがあるんだよ


可奈:だから、何よ、その癖って


充:でも、教えちゃうとなぁ・・・


可奈:ケチな事言わないで、教えてよ


充:教えて欲しいか?


可奈:うん、教えて欲しいわ


充:そっか・・・


充:お前さ

充:嘘をつく時、瞬きの回数が増えるんだよ


可奈:え?


充:東京で、何かあったんだろ?


可奈:・・・・


充:話したくないなら、話さなくていいよ

充:人のプライベートなんて、わざわざ聞く趣味はないから


可奈:うん・・


充:まぁ、何があったかは知らないけど

充:こっちにいる間、のんびり過ごせよ


可奈:うん・・・


充:・・・・


充:そうだ、明日の夜は町内の盆踊りがあるだろ

充:一緒に行かないか?

充:お前の好きな屋台もあるぞ


可奈:うーん・・・


充:特にやる事ないんだろ?


可奈:それは、そうだけど・・・


充:じゃぁ、行こうな


可奈:別にいいけど・・・


充:久しぶりに、可奈の浴衣、見たいんだけど


可奈:それは考えとく


充:そうか・・・



可奈(M):みっちゃんの言葉で私は少し落ち着けた気がする。

可奈(M):帰りの電車の中での、みっちゃんとの会話は、久しぶりに楽しいと思う事が出来た。


充(M):可奈は東京で何かあったようだ、

充(M):5年も帰って来なかった地元に、帰ってくるには、

充(M):やっぱり、それなりの理由があるんだろう。

充(M):心配だけど、可奈が黙っているなら、聞かない方がいいだろうなぁ



充(M):次の日の夜、俺たちは町内の盆踊り会場にいた。

充(M):盆踊りの会場は、歩いてるだけで面白い。

充(M):可奈も、この雰囲気の中で、元気になってくれればいいんだけど・・・


可奈(M):私達は出店(でみせ)の並ぶ道を、いろんなものを見ながら歩いた。

可奈(M):みっちゃんのリクエストで、久しぶりに浴衣を着てみたけど

可奈(M):やっぱり、少し歩きづらいな・・・


可奈:そして、一通り、屋台(やたい)を見たあと、たこ焼きとリンゴ飴を買って、ベンチで少し休む事にした。


充:ふう、ようやく座れるって感じかな

充:可奈、疲れたか?


可奈:そうね、ちょっと疲れたかな。

可奈:浴衣歩きにくいし


充:そんな事いうなよ

充:そのかわり浴衣のお礼に、たこ焼きおごったじゃない


可奈:足らないかなぁ・・・


充:そんな・・・ははは


可奈:貸しにしておくわ


充:そんな殺生な


充:ところで、可奈はいつまで、こっちにいるんだ?


可奈:16日から会社だから、15日に帰ろうと思ってる


充:そうか


可奈:みっちゃんはいつから仕事なの?


充:俺も同じ、16日から


可奈:そっか、まぁどこも同じようなもんね


充:そういうのに関西も関東も無いからな


可奈:・・・うん・・・


充:どうしたんだ?


可奈:ううん・・・


充:何かあったのか?


可奈:うん・・・会社でね・・・

可奈:私って必要なのかなぁって、思っちゃったんだ


充:どういう事だよ、関西弁が不評だったんか?


可奈:違うわ


充:ごめん、ごめん、・・・で?


可奈:私ね、3月にコロナに感染しちゃったのよ


充:・・そうなんだ・・・


可奈:うん、それでね、会社を10日休んだの


充:まぁ、コロナじゃ会社に行けないからな


可奈:・・・・うん


充:それがどうかしたのか?


可奈:10日休んで、

可奈:会社に申し訳ない気持ちで出社したら

可奈:何も変わっていない、いつもの会社だったの


充:それって、いい会社って事じゃないのか?

充:それがどうしたの


可奈:いい会社だと思うわよ・・・

可奈:でもね・・・


充:でも?


可奈:私の抱えてた仕事も、もう終わってたの

可奈:みんながフォローしてくれて・・・


充:それだって・・・


可奈:分かってるのよ

可奈:会社のみんなには感謝しているの


可奈:でもね、

可奈:私の仕事だから、私にしか分からない事があると思ってたんだ


可奈:でも、私が休んでいる間、

可奈:電話とかメールでも、誰も私に、仕事の事、聞いてこなくてさ


充:・・・・


可奈:私ね

可奈:会社に入って3年間、一生懸命働いたつもりよ


可奈:4年目になって、小さかったけど、誰かの手伝いじゃなくて、

可奈:私がメインの仕事を任せて貰えたの

可奈:凄く嬉しかったわ



可奈:それで、幾つかそういう仕事をこなして

可奈:今度は、少し大きめの仕事がもらえたの


可奈:でも、その仕事の途中でコロナに・・・


充:そうだったのか


可奈:出社したら、私の仕事は綺麗に片付いていて

可奈:私には別の仕事が用意されていたの


充:・・・・


可奈:それで思ったの

可奈:この仕事も、また私がコロナで休んだら、誰かが片づけちゃうんだろうなぁ・・・って

可奈:私って会社に必要なのかなぁって

可奈:3年間、あんなに必死でやって来たのに


充:なんだ、そんな事か


可奈:そんな事って何よ

可奈:みっちゃんには私の気持ちなんて


充:あぁ、分からないよ

充:可奈、

充:お前、そんな3年や4年で、何かデッカイ事が出来ると思ってたのか


可奈:別に、そういう訳じゃ・・・


充:仕事を任せてもらえるだけ、可奈の方が俺よりいいじゃないか


充:俺なんて、まだ手伝いくらいしか、させてもらえないよ

充:言ってみれば、単なる労働力でしかないんだよ


可奈:それは・・


充:会社の上司に言われたよ。

充:どれだけ出来る奴でも、30超えて、ようやく使える人間程度、

充:40くらいにならないと、本当の意味で必要な人間には、なれないんだってさ。


可奈:・・・・


充:若いうちは単なる労働力

充:その労働力のうちに、どれだけ実力が付けれるかが勝負なんだってさ


充:まぁ、それは俺の会社の話なんだけどさ

充:どの会社でも、あんまり変わらないんじゃないか


可奈:そうだけど・・・


充:俺だって、上手く結果がだせなかったり、思った事をさせてもらえなくて、

充:イライラしたり、鬱になりそうになったりするさ


可奈:え? みっちゃんが?


充:あぁ、

充:それこそ、今の俺の仕事なんて、誰がやっても大して変わらないよ

充:それでも、俺だから良かったって言われるように頑張ってるのさ


可奈:そうか・・・


充:可奈の気持ちはわかるけど、ちょっと考えすぎなんじゃないのか?

充:話聞いてると、会社の人はいい人そうだし

充:俺からすれば、可奈が羨ましいくらいだよ


可奈:ありがとう、そう言ってもらって、少し楽になったわ


充:そっか、よかったな


可奈:昨日、大人になったら変わるって言ったけど

可奈:みっちゃんは変わらないわね


充:そうか?


可奈:昔のまま


可奈:人の気持ちは分からないけどねw


充:人の気持ちなんて、分かるもんじゃないんだよ

充:だから、大事にしようって思うんじゃないか


可奈:え?


充:あー、あれだ

充:俺が変わらないのは、この街が変わらないからな

充:いつも定番のボケとツッコミ。

充:東京みたいにコロコロ、コロコロ

充:流行(はやり)りに流されたりしないからだよ。

充:だから、変わらないように見えるんだな


可奈:ふふ、そうかもしれないわね


充:そうだ、明日も盆踊りやってる所あるから、一緒に行こうな


可奈:もう浴衣は着ないわよ


充:そんな・・・


可奈:ふふふ


可奈(M):私はみっちゃんの言葉で気持ちが楽になった

可奈(M):そして、みっちゃんは、私が大阪にいる間、盆踊りだけじゃなく、いろいろな所に連れ出してくれた。



可奈(M):8月15日

可奈(M):東海道新幹線の上りのホーム

可奈(M):東京に帰る私をみっちゃんが見送りに来てくれた


可奈:わざわざ、見送りに来てくれて、ありがとうね。


充:そんな事いいって


可奈:みっちゃんのおかげで、気持ちの整理がついたわ

可奈:ありがとう


充:それはよかったな

充:東京でも元気でやれよ

充:また、こっちに帰って来い


可奈:うん

可奈:久しぶりに帰って来て、私はやっぱりこの街が好きだって

可奈:思い出せた気がする。


充:そっか

充:俺は可奈の事、好きだったよ、ずっと


可奈:え?

可奈:なによ、突然


可奈:ずっととか言って、高校の頃、何も言わなかったくせに。


充:俺はさ、子供の頃から大阪が好きで

充:大阪で生きていきたいと思ってたんだ。

充:阪神(はんしん)好きだしな。

充:だから東京に対して『憧れが一杯』の可奈を、止められなかったんだよ

充:まだ高校生の俺じゃ、お前を引き留めたって、責任取れなかったしな


可奈:ずるいよ

可奈:今から東京に戻る私に、そんな事いうなんて

可奈:東京に帰りたくなくなっちゃうじゃない・・・


充:はは、すまんな

充:でも、そんな事は気にするな

充:いつでも大阪に帰ってこいよ


可奈:やっぱり、私、東京に戻らない


充:可奈・・・


可奈:戻りたくない・・・


充:いや、戻らないと不味いだろ


可奈:みっちゃんが悪い


充:悪かったって


可奈:だって・・・


充:瀬(せ)を早(はや)み

充:岩にせかるる

充:滝川(たきがは)の

充:われても末(すえ)に 逢(あ)はむとぞ思ふ


可奈:みっちゃん・・・


充:お前の好きな歌だったろ


可奈:・・・・うん


充:大阪なんて近いもんさ

充:いつでも、帰ってこれるだろ


可奈:うん・・・わかった


充:なんなら、俺がお前を迎えに行ってやろうか


可奈:何よそれw

可奈:そういう事は、もっと格好(かっこう)良く言ってくれないとw


充:ははは、そうだな


可奈:あ! そういえば


充:ん?


可奈:みっちゃん、私が嘘をつくときの癖(くせ)、ずっと隠(かく)してたでしょ

可奈:どうして、今まで教えてくれなかったのよ


充:あぁ、あれか

充:あれは、嘘(うそ)だよ


可奈:え?


充:お前が何か隠してそうだったから、カマかけただけだよ


可奈:えー、ひどーい

可奈:もう、信じちゃったじゃない!


充:ごめん、ごめん、テレビでやってて恰好よかったから、一度使ってみたかったんだよ


可奈:もう、あいかわらずね

可奈:ふふふ


充:ははは


可奈:それも貸しにしとくね


充:そんな・・・


可奈(M):こうして私は東京に戻った

可奈(M):肩の力の抜けた私は、東京に戻ってから、今まで以上に頑張る事が出来た。




可奈(M):そして、あれから3年

可奈(M):驚いた事に、本当にみっちゃんが私を迎えに来てくれました。


充:浴衣の借りを返さないといけなかったからね・・・


可奈(M):みっちゃんとの結婚を機に、私は大阪に帰り、

可奈(M):今では、仕事と子育てとボケとツッコミに追われる、忙しくも幸せな暮らしをしています。


可奈(M):あの時の事は、今でも、照れくさい、いい思い出として、私の中に残っています。

可奈(M):今思うと、あの時のみっちゃんは、夏の日差しよりも眩(まぶ)しかったかもしれません。


可奈:あー、ガラじゃないわ


充:そんな事ないって、可愛かったよ、可奈


可奈:バカ、照れくさいじゃない

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