私用電話(女性ひとり読み編)

Danzig

第1話


トゥルルルル

電話が鳴る


女:はい、山本物産でございます。


電話:・・・・・


心:あぁぁ、たかしだ!

心:今日は上司がいる日だから、私用電話はかけて来ないで言ったのに、どうして掛けてくるのよ!


女:はい、いつもお世話になっております

女:そのご用件でしたら、私、伊東が承(うけたまわり)ります


電話:・・・・・


心:何度も名乗らなくたって、たかしだって事くらいすぐわかるわよ。 もう・・・困ったな・・・


女:はい、その件につきましては承知しております



電話:・・・・・


心:別に畏(かしこ)まってるわけじゃないのよ。 仕事場ではこれが普通なの。

心:それに、上司がいるから二人だけの時みたいには話せないのよ。 そんな事くらい気付いてよ


女:ははは、そんな事はございませんよ



電話:・・・・・


心:ちょっ・・・・あんたの気のせいじゃないわよ。 ビジネストークしてる時点で気付くでしょ、普通!

心:たかし・・・鈍感にも程があるわよ。 何プレイなのよこれは!


女:そんな事もございませんよ



電話:・・・・・


心:な、何言ってんのよ、『愛してる』だなんて、今言える訳ないじゃない。

心:側に上司がいるのよ、たかし、気付いてよ~


女:そう、仰られましても・・・・



電話:・・・・・


心:ちょっ、嫌いになったりとか、そんな訳ないじゃない。 私も愛してるってば


女:はは、とんでもございません、そんな事はございませんよ



電話:・・・・・


心:な、何で言わないのって・・・・・

心:だから、今は上司がいるから言えないんだってば・・・・もう・・・・困らせないでよ、たかし


女:弊社の営業時間は午後5時までとなっておりまして・・・


心:仕事が終わったら、くらいでも言ってあげるから・・・



電話:・・・・・


心:ゴメンね、たかし。 お願い、今は我慢して。

心:後で電話するから・・・ね、ね。


女:お客様、本当に申し訳ございません。 

女:その件につきましては、また折り返し・・・



電話:・・・・・


心:な・・・


女:なんでそうなるのよ! 私だってちゃんと愛してるわよ!


(ガチャン! 強く電話を切る)


女:ったく・・・・はっ!


(今の状況に気付くゆかり、驚く上司と目があう)


女:いや・・・課長・・・あ・・・・あの・・・・・その・・・・つまり・・・

女:い、悪戯電話だったんです。 ははは・・・


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私用電話(女性ひとり読み編) Danzig @Danzig999

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