カプセルトイとか、ガシャポンとかガチャガチャとか、あの正式名称って何でしょうか?人工出産が当たり前になった世界。遺伝子操作による「才能」が、カプセルトイに入って全国民に配られるよ、という話です。しかしその才能というのはハズレばかりで……。やや堅めの文章ながらも、要所要所で脱力ネタがはさまれ、読みやすいSFに仕上がっています。
でも、使う権利があるなら行使したい。親のエゴとも言えるし、人間の性とも言える結構切実な心理。それが、いわゆるガチャガチャ(ガチャポン)の形式を取っているという、お気軽に生命倫理に触れる仕組みで成り立つ社会……。こうした世界観はSF・ディストピア小説の醍醐味でありつつも、どこか昨今の嫌な親子・家族論に通じるものも感じられ、そこはかとない不気味さがありました。それなのに読み心地がさっぱりしている、不思議で興味深いお話です。
本作はSF。ちょっとSFでクスッと笑いたい人におすすめします。近未来、国民皆能力が与えられた人々のお話です。面白いのは行政的手続きとしてありえない設定を読ませるところで、大人向けのSFです。いわゆる外れスキルを手に入れてしまった主人公には実は秘密があって……というお話で、壮大な物語のプロローグとしても読むことができます。