必殺仕事人風台本3『仁吉』

Danzig

第1話


集合場所に集まる仲間たち


お市:二人とも来てるね


仁吉:お市(いち)さん、何だよ急に呼び出して


お市:仕事だよ


仁吉:仕事か、今日は何人だい?


お市:今日は一人だよ


仁吉:なんだい、一人かい、じゃぁ俺にやらしてくれよ


左之助を見るお市


お市:左之助、あんたはそれでいいかい?


左之助:あぁ、好きにしな


お市:わかったよ・・・・

お市:じゃぁ、仁吉(にきち)、今回はあんたがやりな


仁吉:よし、呼び出されて手ぶらで帰りたくないからな

仁吉:で、誰をやればいいんだい


お市:まぁ、そこへお座りよ

仁吉:あ、あぁ


台の上に金を置くお市


お市:これが依頼料


仁吉:何だい、随分細かいな・・・


お市:全部で弐朱(にしゅ)だよ


仁吉:弐朱(にしゅ)? たったの?


お市:この金はね、坊やが、おっかさんの為にって、屑(クズ)拾いをして、何年もかけて、貯めた金だそうだよ


仁吉:そ、そうかい、まぁいいや

仁吉:で、誰をやるんだい


お市:仕事の相手は・・

お市:残雪(ざんせつ)のお竜(りゅう)。 仕事人だよ


仁吉:な!


一瞬の沈黙


左之助:お市


仁吉:お市さん、それ本当なのかよ


お市:こんな事、嘘をついてなんになるのさ


仁吉:そんな・・・お竜さんって・・・


左之助:お市、何か、訳があるのかい


お市:訳っていうか・・・


左之助:どうした


お市:依頼人は九つになる男の子、母親をお竜に殺されたんだってさ


仁吉:殺されたって・・・だって仕事だろ?

仁吉:俺たちは仕事で人を殺すんだぜ

仁吉:その家族からの依頼を受けて、仲間殺すのかよ


左之助:仁吉(にきち)、お竜はもう仲間じゃねぇ


仁吉:何言ってんだよ、同じ事だろ

仁吉:別に喧嘩して別れたわけじゃないだろ、お竜さんがふらふら居なくなっただけじゃないか


お市:違うんだよ


仁吉:違わないだろ

仁吉:また、戻ってくるかもしれないだろ


お市:そうじゃないんだよ


仁吉:じゃぁ、何が違うんだよ


お市:その母親は、仕事で殺された訳じゃないんだ


仁吉:え?


左之助:本当か?


お市:あぁ


しばし沈黙する三人


左之助:まさか、見られたのか


お市:・・・・


仁吉:そうか、見られたんだよ

仁吉:だったら殺しても仕方ないだろ?


左之助:そうなのか?


お市:それがよく分からないんだよ


左之助:どういうことだ


口が重いお市


お市:その母親については、見られたのか、巻き込まれたのか、よくわからないんだよ

お市:ただね・・・


左之助:何かあるのか


お市:近頃のお竜は、あんまりいい話を聞かなくてね

お市:やたらと仕事を受けてるみたいでさ

お市:なんか、殺しを楽しんでるみたいだって・・・


左之助:お竜が・・・


お市:それに・・・

お市:その母親の時だけじゃないんだよ、依頼以外の人間も殺したのは


仁吉:そんな・・・


お市:あのお竜が、見られるなんてヘマを、何度もするとも思えないだろう?

お市:それでさぁ


左之助:仕事を受けたってのか


お市:そう元締めが・・・


左之助:そうか


仁吉:そんな・・・

仁吉:何が『そうか』だよ左之助さん!

仁吉:あんた、お竜さんが殺されてもいいのかよ


左之助:それが仕事ならな


仁吉:何言ってんだよ

仁吉:左之助さんがそんなに薄情だとは思わなかったよ

仁吉:俺は嫌だぜこの仕事


左之助:自分が受けた仕事、放っぽりだすのか?

左之助:おめぇ、仕事なんて辞めちまえよ


仁吉:あんたに何が分かるんだよ

仁吉:あんたは、お竜さんの事を、昔の仕事仲間くらいにしか思ってないかもしれないけどな

仁吉:俺にとっちゃ、仕事を教えてくれた、大事な師匠なんだよ

仁吉:俺は受けないからな、受けるならあんたが受けろよ


左之助:あぁ分かった、俺が受ける

左之助:お市、それでいいな


お市:あ、あぁ


左之助:どうせ、こいつにさせたって、しくじりそうだしな


仁吉:あぁ、そうしてくれよ

仁吉:大事な人を、自分の手に掛けれられる訳ないだろ

仁吉:どうせあんたには、大事な人を仕事に掛けられる俺の気持ちだって、分かんないだろうよ


お市:バカ!


仁吉の頬をたたくお市

仁吉:何すんだよ


お市:わかってないのは仁吉、あんただよ

お市:左之助がこの世界に入って、最初に仕掛けた仕事の相手はね、自分の母親だったんだよ


仁吉:え、そんな・・・


お市:それに、お竜と左之助はね・・・


左之助:お市、

左之助:余計なことを、そんなガキに話してんじゃねぇよ


お市:あ、あぁ・・ごめんよ・・・


左之助:で、お市、お竜は今どこにいるんだ


お市:・・・千寿(せんじゅ)だってさ


左之助:わかった・・・


左之助:じゃぁ、もう俺は行くぜ


お市:あぁ・・頼んだよ


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