最終夜 ありがとう、ゆめちゃん
嬉し恥ずかしうらめしや!
すっかりおなじみ、あなたの隣にお一ついかが?
幽霊女子のゆめちゃんだよー!
うん、確かにちょびっとだけ久しぶりだね。
術後の経過も良好みたいじゃないか。
だから言ったじゃん。
アタシに任せておけば心配ないってさ。
全部先生のおかげ?
かぁー、まったく。
キミってヤツは最後まで減らず口を叩きやがるね。
最後って何、って?
ありゃ、言ってなかったっけ。
アタシはもうお役御免ってことだよ。
キミが自分の意志で手術を受けて、無事成功するまで見守るってのがアタシのミッションだったってわけ。
……ちょっとぉ、そんな辛気臭い顔しないでよ。
アタシはぜんっぜん平気だもんねー!
何たって、アタシは、霊界一の、美少女ゆうれ……うぐぐ……うぅ、ゆめちゃ……ゲフッ、ごほっ、ぼはっ【むせび泣くゆめちゃん】
ぐふっ、ちっ、ちげーし!
これは、その、さっき食べたソーメンがなぜか鼻の中に入っちゃって、鼻がキーンってして……。
ふふ、キミも顔ぐっちゃぐちゃになってるよ。ひどい顔しちゃって。
ほら、これで涙を拭きなよ。【どこからか幽霊の白い三角を出すゆめちゃん】
短い間だったけど、すごぉ~く楽しかった。
だからさ、キミも泣かないで。
笑ってお別れしよっ、ね。
***
おぉ、構わぬぞ。苦しゅうない。
最後だし、気になることは何でも答えてしんぜよう。
はいっ!
じゃあ、一番早く手を挙げたそこのキミっ!【ビシィッ】
何でゆめちゃんは物が食べられたり、人に姿を見せることができるんだって?
ふふん、やっぱりそこ気になっちゃう?
それはね、アタシの中に半分現世の魂が入っているからだよ。
生霊?
言ったね。ガチで怖いワード。
キミが怖がるかと思って言わなかったのに。
まぁ、アタシを依り代にして、キミに思いを届けたかった子がいたってことなんだろうねぇ。
だから多重人格だったのかって?
いや、まぁ、それはあるかも。
でも、そんなアタシに最後までついて来れるなんて、キミもなかなかのモンだったよ。
美人と上から目線は三日で慣れる?
ふふ、ほんとに言うようになりやがって、コイツめ。
あ、そう言えばキミに言ってなかったことがあった。
向こうの女の子にも幽霊が会いに行ってたんだよ。
その中にはたぶん、キミの生霊が入ってる。
一体どんな会話をしてたんだろうねぇ。
あー、もしかしたらあんなことやこんなことをしちゃってたりして。
キャーやらしー【赤面ゆめちゃん】
聞いてないって?
そりゃまぁアタシも今思い出したからね。
なぁにぃ、最後までポンコツっぷりが目に余る、だとぉ?
言ったなぁ!
それって自分で言うのはいいけど、人から言われたら何気に傷つくワードのトップ3に入るんだからなぁ!【適当】
最後だからって優しくしてやってりゃ調子コキくさってからにぃ。
よーしわかった。
最後にキミにアタシの究極の呪いをかけてやるぜ。
ふふふ、ダーメ。【耳元に近づいて】
この呪いからは逃れられないんだからね。
いいねぇ、その顔。
くっくっくっ、もっともっと怯えなさーい。
どんな呪いをかけるつもりだって?
……それは内緒だよ。って、えいっ!【幸せのおまじないっ】
へへー、もう呪っちゃったからね。
まぁまぁ、こうなった以上は諦めなさい。
さぁて、キミに呪いもかけたことだし、アタシはそろそろ行かなくちゃ。
……うん、使命を果たしたからね。
またアタシを必要としている人のところへ行かなきゃなんだよ……。
これでもあたしゃ有能幽霊少女だからね。
いやー、人気者すぎてゆめちゃん困っちゃうよ。
って、だから泣くんじゃないってば。
笑ってお別れするって約束でしょ。【にっこり】
【宙にふわっと浮き上がる。目には涙が光るゆめちゃん】
大丈夫。またきっとすぐに会えるから――
じゃあね。
もう二度と病気になんてかからないでね――
さようなら。
短い間だったけどすごく楽しかったよ。
ありがとう、キミ――
【浮いたまま病室の窓を通り抜け、ゆっくりと空の景色に溶けていくゆめちゃん】
今度はアタシが頑張る番だね。
待っててね、アタシだってきっと――
***
【ナレーション】
しばらくして少女の手術も無事に成功したとの連絡が少年の元へ。
二人は何度か手紙のやり取りを重ねたあと、初めて外で会うことに。
時刻は夕暮れ時。
海が見える見晴らしの良い丘の上の公園にやってきた。
そして――
え?
本当にそんな性格してたなんて思わなくて驚いた、って?
その言い方だと、なんかアタシに不満があるみたいじゃないか。
てゆーか、キミは一体どこに驚いてるんだい?
なんか、前に散々キミを驚かせようとしてた気がするんだけど。
う~む、何か思い出せそうなんだけどなぁ。【首を傾げる少女】
は?
幽霊みたいに病的に白い肌しているね、ってぜんっぜん誉め言葉じゃないからね!
てゆーか、褒めるの下手を通り越してセンスとち狂ってんじゃん!
それか、脳のどっかが致命的にバグってんの?
どうせなら、処女雪のように白くて美しい肌とか……
ん、若い子が自分で処女とか言うなって?
いや、アタシは処女じゃなくて処女雪って……
ぷっ、まぁいいや。
あぁ……キミは相変わらずだね。【にっこり】
ん、何の不満もないし、白い肌って思ったのもほんとだって?
なら……まぁいいけど。
【少年がそっと手を握ってくる】
うわー、なになに。どうしたいきなり?【ドキドキ】
小6のくせにマセてんなぁ、この女ったらしがよぉ。
こりゃおねーさん、キミの将来が心配になっちゃうぜ。
自分だって1つしか歳が変わらないのに?
って、ううう、うるさーい!
でも、まぁいっか。
ね、アタシの手はひんやり冷たくて気持ちいいでしょ?
【耳元で】
夏とキミにはぴったりだと思うんだ。
――このゆめちゃんの手のひらは。
〈おしまい〉
――――
★あとがき★
最後までお読みいただきありがとうございました!
ASMRって何の略かもわかっていない自分が書いたので、「なんかちがーう」って思われた方もおられると思います。ええ、自分もそう思います(;・∀・)
でも、この話を思いついた時に頭に描いていた内容を形にすることができたので、個人的には満足しています。
本編は作者が初めて書いた一人語り&女性主人公であったため、書き始めは予想以上に筆が進まなかったり、書いていても途中で筆が止まったりと、なかなかの苦戦を強いられましたが、書き終わってみれば自分の中では過去イチに可愛いヒロインと出会えた作品になったかと思います。
個人的には特に3話と4話が好きだったりします(^^ゞ
お読みいただいた方の好きな回などありましたらコメントをいただけたら嬉しい限りです。
また、もしよかったら★評価とフォローをいただけますと幸いです(★はいくつでも大歓迎です)。
★イマイチ ★★なかなか ★★★面白かった
くらいの基準で、お気軽にお願いいたします。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
幽霊女子のゆめちゃん~霊界一の美少女幽霊がクセつよ過ぎて夏の想い出が色褪せない~ 月本 招 @tsukimoto_maneki
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