売り上げは天気次第、恋の行方は君次第

二人の夏はこれからが本番、という読後感がいい。
構成は考えられているし、展開もテンポよく進んでいく。

店前でナンパされていたときの対応、手際がいい。
今年はじめて海の家のバイトをしたのではないのだろう。

描写があまりないことから、梨奈を好きになったのは外見ではない。
のちに「梨奈さんと出会って優しいギャルがいるということが知れた」とあり、好きになったのは見た目ではなく中身、優しさからだろう。

飯塚父は妻と喧嘩して帰れないといっている。
転勤の内示が出て、妻は埼玉から引っ越したくなかったのかもしれない。 

山本和樹は前半、どちらかといえば受け身で書かれている。
子供のときは陽キャだったが、現在は内向的になっている。
卒業アルバムは過去の象徴であり、なにかがあったことが伺える。

ロン毛で見た目がいまいちで、受け身的な性格だった過去の自分から、髪を切ってもらって見た目の変化で脱却できた。
おかげで自信を取り戻し、過去の自分とも向き合えたから、バーベキューで出会っていたことや梨奈のことも思い出せたのだ。

隣の席の女子が面白い。
さぞかし主人公がイケメンになったのだろう。

七月末から八月三十一日まで、ずっと海の家でバイトしていたのだろう。
和樹がいない間に、引っ越しを済ませたのだ。
梨奈はきっと、驚かせようと連絡を意図的に控えていたのかもしれない。