「病人ゼロを望む思想」の善悪
今回は「病人ゼロを望む思想」の善悪について論ずる。
前回までのエピソードで「優生学」について論じているので、まだ読んでいない方は先にそちらに目を通して欲しい。
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ここまでのエピソードを読んだ読者様の中に、このような考え方をしている方がいるのではないだろうか。
「病人ゼロを望む思想」=「優生学」
勘違いさせてしまったなら申し訳ない。
明言するが、羽川は上記二つを同一視していない。
ただ、「病人ゼロを望む思想」は一歩間違えれば「優生学」につながってしまい、前回までで述べたような悪の側面によって誰も望まない社会体制を形成してしまうのではないかと危惧している。
その理由について、「病人ゼロを望む思想」の善悪とともに論じていく。
「病人ゼロを望む思想」の善
ここで言う病人とは先天的な遺伝子異常により「病気」を持って生まれてくる人たちと、後天的に「病気」になった人たちを含めたすべての病人だ。
このような人たちを一人でも減らしたい、可能ならばゼロにしたいと思うことは道徳的に見て正しいし、不快感や嫌悪感を抱く人は少ないだろう。
どころか、医療従事者や医学生の皆様の中にもこのような思想を持っている方がそれなりにいるのではないだろうか。
この思想の善は、誰かを救いたいと願う、大きな原動力になることと言える。
もう一度言うがこの思想そのものは正しいし、立派で素敵な素晴らしい思想だと羽川は思う。
この思想の根幹には病苦から人々を解放したいという純粋な善意があるからだ。
悪意や敵意など欠片もないことは言うまでもないだろう。
しかし、残念ながらこの思想は誰も望まない地獄の社会体制を形成する可能性がある。
その理由をこれから述べる。
「病人ゼロを望む思想」の悪
病気で苦しむ人をなくしたい、減らしたいという思想における「病人」の対象に、遺伝に関連する「病気」を抱えた人たちも含まれることは理解していただけるだろうか。
このような方たちを減らすにはどうするべきかと考えたとき、これまでのエピソードを読んだ皆様には思い当たるものがあるはずだ。
そう、「積極的優生学」と「消極的優生学」つまりは「優生学」だ。
この二つの持つ悪の側面についてはこれまでのエピソードで述べたので詳しくは割愛するが、要するにろくなことにならない。
もちろん、繰り返すように「病人ゼロを望む思想」そのものは純粋な善意から生まれたものだろう。
しかし「優生学」を「劣っている者たちを攻撃し、排除するための武器」として扱う危険な優生学支持者(すべての優生学支持者が悪だとは言っていない)たちに利用されるのを避けることは困難だ。
ゆえにこの「病人ゼロを望む思想」は自身の胸の内にとどめ、純粋な善意のままにしておくことをオススメする。
まとめに入ろう。
人は3次元を生きるが、優劣をはかるものさしは2次元だ。
どんなに精密で、どんなに高度な技術を結集したものさしであっても、その人の持つすべての価値をはかることはできない。
3本使ってはかれたとして、人には流れる時間があり、ものさしではかることのできる数字も常に変化する。
ものさしは現状しかはかれない。
確定していない未来をはかるものさしなど存在しない。
茶番でしか無いのだ。
そもそも、価値がないことは、命を奪って良い理由にはならない。
これは他人に限らず、自分にも言える。
遊んでばかりで何もしなかった一日を、何の能力も取り柄もない自分を、責める必要などないのだ。
自分に価値が無いと思い悩んで心を痛めるのは、誰かの役に立ちたいという想いゆえだ。
気づいて欲しい。
自己嫌悪に苦しむあなたも、無価値に思える他人も、みんな当たり前に生きていて良いのだ。
そして人に優劣をつけ、劣っていると決めつけられた罪なき命を奪った歴史を、もう二度と繰り返してはならない。
これまでのすべてのエピソードをふまえて、羽川は「優生学」について、こう結論づける。
現代にも未来にも、存在してはならない。
以上
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「病人ゼロを望む思想」の善悪 羽川明 @zensyu
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