「消極的優生学」の善悪

今回のエピソードでは「消極的優生学」の善悪について論ずる。前回と前々回のエピソードを読んでいない方は先にそちらを読んで欲しい。

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「消極的優生学」の善


 善、言い換えれば良い点は遺伝子異常による「病気」が子孫に遺伝しないので、先天的な「病気」で苦しむ者を減らせることだ。


 が、羽川はこの良い点を支持していないし、「消極的優生学」を擁護ようごする意図はまったくないと明示しておく。



「消極的優生学」の悪


 悪、言い換えれば悪い点は劣っている(と主観的に判断される)者に偏見を持って攻撃し、排除しようとする危険思想に直結することだ。


 言うまでもないとは思うが、深刻かつ到底許されざる行為である。


 そもそも人に対して優れている、劣っているという優劣をつけて分類することそのものが道徳からかけ離れた危険思想なのだ。


 そして先天的な問題によって劣っていると分類されたところで当人にはどうすることもできないため該当する人物に非はないし、攻撃することも排除することも絶対にあってはならない。


 また後天的な問題で劣っていると分類する場合、現時点で優れている、つまりは攻撃や排除の対象にならない安全圏にいる者でもあとから劣っている者に分類が変更される可能性があるのだ。


 結果自分が抱えている「病気」をおおやけには隠さなければならず、他人(公的機関や信頼できない相手など)に頼ることができないまま一人で苦しむことになる。


 そんな世の中を誰が望むのか、という話なのだ。



 ここまでで「積極的優生学」と「消極的優生学」両方の善悪について論じた。


 次回はこの二つを踏まえ、今作のタイトルでもある「病人ゼロを望む思想」の善悪について論ずる。


 今作で論じるのは次回のエピソードが最後なので、興味を持っていただけたなら読んでもらえるとうれしい。

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