「優生学」の善と悪

「積極的優生学」の善悪

 今回のエピソードでは「積極的優生学」の善悪について論ずる。


「積極的優生学」と「消極的優生学」の違いについては前回のエピソードで述べているので、読んでいない方はまずそちらから目を通して欲しい。

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「積極的優生学」の善


 善、言い換えれば良い点は優れている者の生殖を積極的にうながすことで(生物として生き残りやすいという意味で)優れた遺伝子を後世に残せることだ。


 具体的にどのような要素が優れているとこれに該当するのか以下に羅列られつする。


・病気になりにくい

・病気の影響を受けにくい

・環境やその変化の影響を受けにくい

・長寿である

・身体能力が高い

・知能指数が高いなど、脳の性能が良い


 などだ。


 ちなみに多くの動物は容姿が優れているほど繁殖する機会が増えるが、現代の人間社会では容姿が優れていることが必ずしも生き残りやすい、繁殖する機会が増えるとは断言できないため除外する。


 話を戻そう。


 前述したこのメリットは非常に大きく、人間社会の発展と繁栄はんえいに直結する。

 その結果人間という生物が絶滅しにくくなるので、生物が後世までより長く生き続けることを目的としていると考えるならそのメリットは絶大と言える。



「積極的優生学」の悪


 悪、言い換えれば悪い点は(生物として生き残りやすいという意味で)劣っている者に対する風当たりが強くなることだ。


 しかも「積極的優生学」が世間一般に広がり、一般的になればなるほどこの風潮は強まるだろう。

 「積極的優生学」を推進する国や公的機関が劣っている者を排除しないことを表明したり、劣っている者を攻撃することを批難、厳しく禁止したとしても完全に防ぐことは不可能だ。


 これは何も「積極的優生学」だけに留まる話ではない。


 例えば学校のテストで良い点を取った生徒を高く評価し優遇する制度を設けるとする。もちろん学校側はテストの点が悪い生徒を冷遇しないし、他の生徒がこの生徒を攻撃することを厳しく禁ずる。


 結果どうなるかは、想像にかたくないだろう。


 良い点を取った生徒が校内で人気になる一方で悪い点を取った生徒はストレスの吐け口にされて攻撃される、つまりいじめられるだろう。

 そして、いじめっ子の言い分はきっとこうだ。



 これは「優生学」的思想に他ならない。それも能力的に劣っている者を排除しようとする思想なので、分類としては「消極的優生学」になる。


 お分かりいただけただろうか?


 「積極的優生学」を推進すると、「消極的優生学」的な思想を持つ者が現れて、「能力的に劣っている者を攻撃し排除して良い」というにつながるのだ。


「優れている者の生殖をうながして生物として強い個体を増やす」


 一見聞こえはいいし、劣っている者を攻撃する意図はないので道徳的にも問題ないように思える。

 しかし実際は、


「能力的に劣っている者を攻撃し排除して良い」


 という「消極的優生学」の悪の側面である危険思想につながるのだ。


 では、「消極的優生学」は擁護できない絶対的な悪だろうか?


 次回のエピソードで「消極的優生学」の善悪、両方の側面について論ずるのでどうか結論を急がないで欲しい。

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