恋の病は病院行っても治らない
アキヅキ
俺は病気になった。
紹介しよう。
俺はしがない中学生の庄田士。
これで〈しょうだ ただし〉という、信じて欲しい。
ガキの頃からイジられまくっている名前で昔は泣いていた。
小さい頃はイジりとイジメの違いなんてやる方もやられる方もわかってなかった。
だから加減なんか勿論なくてその様はヒドいものだった。
_センセ引いてたな。
センセが引くなんてホントはあっちゃいけない。
でも、不良だってイジメだってセクハラだって、わかったところでどうともしようがないのが現状だった。
_しかし、それは昔のこと。
今はそのイジメも軽くいなせるし、そもそもそんなイジメはもうない。
_イジメてくれるヤツがいない。
「淋しそうだね?」
「そんなワケはない」
でも、窓際に寄り添うその姿は寂しいですと言っているように見えたのだろう。
俺はつい窓に向かって悪態を
「何のようだ?アヤカ」
「声かけてあげたのに何よ」
昔は校舎裏で慰めてあげたのにw
「ナニをだ?」
こういう下ネタ紛いの会話もできてしまう間柄でコイツとの付き合いは長かった。
生まれた病院が一緒、退院日も被る、児童館に、幼稚園も一緒。
で小学校も一緒でイジメの現場を止めに入ってくれたことも少なくない。
実は病気の原因はコイツだ。
俺はコイツのことが好きになっていた。
安っぽいかもしれないが運命を感じてしまった。
あんまり胸が疼くので病院に行ったら、
「これは恐らく循環器内科ではなく、精神内科の方ですね。紹介状を出しますのでそちらへどうぞ」
紹介状を持って精神内科を受診した。
まず胸のレントゲンを撮った。
うっすら骨の形が写った自分の体の写真。
それで色々説明を受けるが特に何言ってるかはわからない。
「それでは薬出しておきますね」
え?何の?怖い。
「先生。薬ってどんな副作用がありますか?」
「記憶が消えます」
あ!?
「あのやっぱり薬いらないです」
「でも、この薬飲まないと胸の痛みはなくなりませんし、恋の成就もしませんよ?」
「自力で何とかします」
やっぱり病院で何とかしようってのが間違いだった。
薬飲まないと成就しない恋って何だよ全く!
俺は、、アヤカが!
「士」
ッとっとと、あぁ
「どうしたの?病気?」
「あぁあの、ちょっと風邪引いてな」
ここ精神内科だよ?
ッ
おろおろし始める俺を見たアヤカは
「ウチ、来ない?ちょっと話聞かせて」
その優しい言葉、声、匂い、それにこの流れは手を取らない方が不自然なんだけど、
「いや、伝染しちゃ悪いし帰るよ」
恋の病は伝染する。
何かの病気が伝染するような形ではなく、影響という形で。
例えばこれから告白しようとしている人が目の前にいるとする。
それが好きな相手だとしたら、そうでなくとも長い付き合いの相手だとしたらどうだろう?
少しは影響されるのではないか。
だから俺は帰ることを選んだ。
帰ることを選んだんだ。
それなのに。
「もう伝染ってるよ私も士が大好き」
柔らかい笑顔のアヤカはいつものお茶目な感じじゃなくて、、
何が薬飲まないと成就しないだよ。
やっぱり恋の病は病院行っても治らないんだなw
Fin
恋の病は病院行っても治らない アキヅキ @aki-2ki
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