――――――確かに、世界を救うってのは間違いねえらしい。

「……ご苦労だったな、お前たち」


 ゲット山脈の研究所に帰ってきた俺たちは、ジジイたちに三者三様の歓迎をされた。

 ジジイからは、たった一言だけ。


「すっごーい! 初めてで、あんなに『ラグナー』を乗りこなせるなんて!」


 クートは、興奮して俺たちの周りを飛び回り。


 キュールからは、全員がもれなく平手打ちを食らった。


「――――――自分たちがどれだけ馬鹿な真似をしたかわかってるの?」

「いいだろ別に、勝ったんだからよ」

「生む。それに、感覚もつかんだ。そうそう間があかなければ、再び乗って戦うことも可能じゃ」

「そうだよ、おねーちゃん! 何もそんなに怒らなくてもいいじゃない」

「クートは黙ってちょうだい」


 姉妹のぴりついた雰囲気に、戦勝ムードだった研究所内の空気が、伝播する。それを仕切りなおしたのは、ジジイの咳払いだった。


「……とにかく、肌で感じたろう。『ラグナー』と、『ゲノム』。人間程度でどうにかできる相手ではない、とな」

「……ああ」


 実際、砂漠地帯ではかなりの人が死んでいるはずだ。いや、おそらく『ゲノム』は、人だけでなく他の生物も食ったり、爆殺したりしている。


「――――――確かに、世界を救うってのは間違いねえらしい」

「油断するな。『ゲノム』はまだ、8体いる」

「……8体?」

「言ってなかったか? 『ゲノム』は9体いるんだ」


 ジジイはそういい、研究所の奥へと引っ込んでしまった。

 俺はその言葉に、呆然とする。


 ……あんなのが、あと8体? 嘘だろ? たった1体で、砂漠地帯を滅ぼしかけた奴が?


 そんなの本当に、世界の危機じゃねえか。

 

 だが、この時俺は知らなかったし、気づいてもいなかった。

 『ラグナー』のこと。『ゲノム』のこと。


 そして何より――――――この闘いのこと、すべてについて。


 今はただ、未知のパワーを持つ『ラグナー』を操縦した腕がしびれるのを、かみしめることしかできなかったのだ。

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魔導機神ラグナー ~3人の追放者と世界最後の日~ ヤマタケ @yamadakeitaro

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