第10話

男になりたい。それは私の、いや僕の願いだった。

こき使われるだけの下等生物は嫌だった。男になればそんなことはない。女でいれば男に使われるだけの存在。生理だって痛いだけの女への罰でしかない。

女として生きることになんの意味があるだろうか。

僕は男になりたい。


「君のことが好きです。」

のに。どうして告白なんてされてしまったのだろうか。

「女の子だけど強いところとか、好きです。」

女の子は弱くなければいけないのか?いやだ、こき使われるだけの弱い生き物なんて嫌だ。

「可愛らしいというか上品な所作が好きです。」

それでいて上品でいなければならないのか?


「ごめんなさい。」

どうして僕が謝らなければならないのだろうか。頼んだのはあっちでこっちは断る権利があるだけなのに。


「僕よりきっといい人がいるよ。」


恋なんてしたくない。



恋とはどんな感情なんだろうか。

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涙の心臓 あぐ @agsannomonokaki

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