第9話

「ねえお父さん、いい加減自分で使ったフライパンぐらい洗ってくれない?」

ある日、母がそう言った。

父は料理が趣味だった。いや、料理と言うより実験に近かった気がする。出来上がるものは、見た目は悪く、味も濃すぎて食べられたものでは無かったが、本人は美味しそうに食べるので不思議だった。そしていつも困るのが、片付けは母がやっていたことだった。父は使ったくせに片付けなどせずにほったらかしにして見かねた母が片付けるのであった。

「うるせえ!なんで俺が片付けんだよ!」

帰ってきたのは逆ギレの言葉だった。

「やりゃいいんだろ?」

荒々しく水に軽くさらして置いていった。

「はぁ。もういいか。」

母は諦めて洗い直していた。


それが、自分には酷く印象的だった。自分が女であるということは、男にこき使われることであると強く思ってしまった。

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