第8話
いじめとはいえど、なんとも軽いものだった。
私の目の前で渡しの悪口を言われる。肩に油粘土をぶつけられる。罪のなすりつけ。なんとも子供らしいものだった。そして私もまた子供だった。本気にしてしまったのだ。そのときだった。あいつが私という人生の中に現れたのは。
「こっち、おいでよ。」
いつも通り肩に油粘土をぶつけられた後のこと。そいつは私に手招きをした。彼の名は蒼。蒼は数少ない美術部一年の男子部員だった。私は救われたと思った。救われたと思ってしまった。こいつなら、と期待してしまった。
私は蒼にくっついて過ごすようになった。そうするともちろんのこと蒼にもその矛先が向いた。しかし、蒼には私と違って友達がいた。男友達にまでは対抗できないといじめっ子たちは思ったのだろう。蒼への矛先は、私に向いた。私に向かって蒼の悪口を言うのだった。私のことを言われるのは構わない。ただ、蒼のことを言われるのは嫌だった。
私の堪忍袋の尾はそれであっさりと切れた。
「てめぇら舐め腐ってんじゃねえぞ男に反抗できないメス共が。私をいじめて楽しいか?楽しいだろうなぁ。人を下に見ることしか出来ない下等生物が。」
私だって、その一人のはずなのに。
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