独裁国家の成れの果て

@Ryuabcdefg

第1話

とある世界


大ヴァレンタイン帝国 総統官邸地下壕にて…



「陸軍38軍壊滅!総統ご指示を!」


「海軍42軍壊滅寸前!総統ご指示を!」


戦争の被害報告が地下壕に響きわたる


それに対して良い報告が全くこない


「この場にいる将官たちを会議・地図室に集めろ」


「はっ!」


総統がその場にいた警備員に命令を下す


総統は軍服を着ていたものの軍帽は身に着けていなかった。


警備員は駆け足で将官たちが会議していた大会議室に行く。


そして、総統のこの言葉が将官たちに伝わる。


すると将官たちはボールを投げられた犬のように地下壕のなかを駆け出す。


この将官たちの中には、〝もう負けの宣言を自分たちに伝えるのだろう〟と考える者や〝今からこの戦況を打開する案を練るのか〟と思う者、〝もうこの戦況を覆す案があり、それを自分たちに伝え、作戦の実行にうつす〟はたまた〝今後の国のために後継者を決める〟と考える者までいた。


将官たちが会議・地図室に入ると総統はまだ来ていなかった


将官たちが会議室に入ってすぐのこと


総統が入ってくる。


すると、将官たちはすかさず敬礼をする。


総統と呼ばれる男が将官たちの間を分け入り、奥の壁の中心に置かれている椅子に座る。


男は椅子の前にある机に両肘を置き、前屈みなりながら口を開く。


「この戦争は負けだ…この第八次世界大戦と呼ばれた一連の戦争はな…」


力が抜け、弱々しくため息をつくかのように言った。


将官たちの顔が青ざめる。


その言葉に泣き出す者ややはりと思い首を軽く上下させながらも悔しさが顔に出ている者もいた。


総統と呼ばれている男の名をドナルド・ドミニクと言う。


しなやかな黒髪の美男子のイケメンといった印象だ。


だが、少しどこか恐怖や狂気というものを感じる。


それは、赤黒い瞳から感じられるのかもしれない


ドナルドは11歳で軍事社会民主党に入党してから、一年後の12歳で大統領・及び陸海空軍最高司令官の総統に就任した。異例中の異例だった。


「皆、第七次世界大戦のようには、いかなかった。この結果は、私の責任だ。」


ドナルドは語る


「男性の諸君!」


男性の将官が敬礼をする。


「私は、今、男といるものを信じられない。なぜなら私を裏切っていったのはどいつも男だった。こちらが劣勢となると権力欲に溺れる者や逃げ出す者もいた。いつも本当の忠誠というものを誓い、私についてきてくれたのは女だけだ!

将官さえ裏切らなければこの戦況を覆せた!それなのになぜ、なぜ私を裏切ったのだ!!なぜ目先の戦況を鵜呑みにして裏切った?なぜ!?」


ドナルドは激怒する。


「あいつらは、軍人の恥だ。いや、帝国民として生きていてはならない!!」


しかし、怒鳴りすぎたと思ったのだろう。


少し深呼吸をして、落ち着き、口を開いた。


「君たちが悪いわけじゃないな。すまない。最後まで忠誠を貫いてくれて感謝する」


将官の男たちは一度頷き、敬礼をやめた。


「女性の諸君」


女性の将官が敬礼する。


「皆、欠けず、私についてきてくれた。感謝する。」


それだけだった。


「あの…恐れながら。まだ、諦める時では無いのではないでしょうか」


ある女性将官が言う。


この女性の名をデライラ・ダニエラと言った。


黒髪ロングの美女。胸も程よく大きく、俗に言う巨乳。だがしかし、彼女は、邪魔だと思っている。そして、将官の中で最もドナルドを尊敬し、忠誠を誓い、そして、恋愛対象として愛していた。そのことからドナルドからは、

〝忠臣デライラ〟

と呼ばれていた。


だが、彼女の行動は皆に緊張を与えた。


あぁ、恐怖を知らないかとその場にいる人全てが思う。


総統に意見する恐ろしさを。


皆、こいつは処されると思ったもののそうはならなかった。

「無理だ」


ドナルドは勇気ある訴えを取り下げた。


「私の統治は完璧なものだった。自分でも素晴らしいと思う。だが…もし一つ失敗したことは人望や敬愛による支配をしなかった。恐怖による支配をした。それが裏目に出た。だから、部下たちに裏切られた。」


「…そんな…」


女性将官が弱々しく言った。


そして、ドナルドは皆の方を向き、言った。


「私は、自殺する。死ぬ方法は…自爆だ。」


ドナルドは、胸を張って言ったものの、将官たちは驚きを隠さない。


「私は、執務室の隣にある処刑室に行く。私が死んだ後降伏でも外交でもするがいい。」


ドナルドは、忠誠を誓ってくれた部下たちに気まずかったのか、少し俯きそそくさと出ていった。


それを将官たちは絶望した目で見ていた。

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