第6話 神の世界
2つ目のコアも1つ目と同様に簡単に見つかった。やはり、ある程度近づくと迷宮が完成する。しかし、この迷宮は誰が作ったのだろうか?
迷宮の中の道を僕の光で照らしながら進む。今回は前回のような音はしない。影月は来ていないのだろうか?隠れている可能性もあるのでゆっくりと進んだ。
しばらく歩くと別れ道があった。
「ここは僕が…」
蓮が前回同様にコアへ繋がる道を探る。
「こちらの道です。」
そのまま歩き続けてついに部屋にたどり着いた。
前回のように男が現れることもなく、あっさりとたどり着いてしまった。それがとても気味悪かった。
「みんな、油断しないように。まだ隠れていて襲ってくる可能性があるから。」
コアはやはりヒビが入っていた。影月が一歩早かったようだ。みんなでコアの修復をしようと夢響のエネルギーを注ぐ。コアは綺麗に直った。
「今回も楽勝だったな!」
前回の苦労を忘れているのだろうか。煌先輩は元気よく言った。
「よし、迷宮を出て次のコアのところへ早く進もう。影月が先回りしてたみたいだし、もしかすると影月が既に3つ目のコアへ向かってるかもしれないし…」
そう言って歩き出そうとした時、コアの近くの地面に何か文字が掘られているのを発見した。
「なんだ、これ?」
近づいて見てみる。そこには、教科書でよく見るエジプトの古代文字が刻まれている。
「なんて書いてあるんだ?」
「僕が読めるか試してみます。」
蓮が文字へ手を添える。能力を使って書かれていることを読み取ろうとする。
「神の世界の記憶の記録…」
蓮が呟いた。その途端、文字の刻まれた地面のが横に動き出した。
「どうなっているんだ?」
地面の動きが止まった。そして、地面の中には何かが入っている。
「コアの破片だ!」
そこには、青いコアの破片と見られる塊があった。蓮はそれを手に取り夢響の力を流し込む。
「……!」
蓮の表情が変わった。一瞬の驚きを見せ、そのあと何時になく真剣な顔つきになった。
「何かあるのか?」
僕は蓮に尋ねた。
「この中にこの世界の歴史に関わる記憶が記録されてます…」
みんな驚いた。そして直ぐにその内容を知りたいと思った。
「蓮、その内容をみんなに共有することは出来るか?」
「やってみます。」
蓮は更に集中力を高める。部屋の中が夢響のエネルギーで満たされていく。エネルギーが部屋のあちこちに集まり、新たな夢響のクリスタルを作り出している。どんどんエネルギーが濃くなっていった。
「……」
何かを感じることが出来る。他のみんなも同じようだ。
「これはこの世界に関する私の記憶を記録したものである。」
頭の中でそれを理解できる。記憶を見ているので、言語とかは関係ないようだ。
「私の先祖は代々、王国のファラオに仕えてきた。エジプトでは文字が作られ、星の計測法が作られ、暦が作られた。それらは我々の生活に大きく貢献した。そして私達はついに神に匹敵する力を手に入れた。私達は神の世界を作ってしまった。
私達は3つのエネルギーの塊であるコアを作った。その3つのコアが夢響のエネルギーを作り出し、神の世界を作り出している。神の世界は地上世界に力を及ぼすことが出来る。それらの力は私達にどれほどの恩恵をもたらしたか。
ファラオはその権力の強さを表現するためにピラミッドを作った。ピラミッドの作成には多くの民衆が動員された。彼らは神の世界に入ることで夢響の力を振るうことができ、あの大きな建造物を作っていった。
特に、カフ王からの王朝の力は凄まじいものだった。私の先祖はカフ王に仕えていた。先祖は夢響の力を最大限に活用することができ、ピラミッドを従来とは比べ物にならないほど大きく作ることが出来た。それによりファラオからの絶対的な支持を得ていた。
私の叔父もその一人であった。彼はカフラー王のピラミッドを作り上げたほどの実力者であった。しかし、彼は神の世界に適合し過ぎていたゆえに、彼自身が神になろうとした。
彼の力を持ってすれば容易な事だった。神の世界を自分のものとすること、それは地上世界をも自分のものとするのと同じことだった。彼は地上世界を力で支配し始めた。王朝は混乱に陥り、民衆もまたそうであった。
私の父はカフラー王の名により、叔父を倒すこととなった。だが彼の力は私の父が対抗して勝てるようなものではなかった。彼は完全にその世界の者と化していた。全ての夢響の力を使いこなし、私の父を倒そうとした。
私の父は勝てないことを悟った。そして、ある行動に出ることにした。それは……」
「きゃぁぁぁ!」
紫音さんが叫ぶ。そちらを見ると狼に似た怪物がいる。しかも5匹もいる。みんなが戦闘態勢には入る。
敵は勢いよくこちらへ向かってくる。その視線は何かを狙っているようだ。
「蓮!危ない!」
その中の1匹が蓮に襲いかかろうとした。僕は強い光を作り出した。襲ってきた敵がよろめく。
「おりゃあ!」
煌先輩の炎で焼き尽くされた。だがほかの4匹も次々と襲ってくる。
冬華さんが氷で凍らせて足止めをしたり、葵が風の斬撃で敵を倒した。だが、全匹止めることは出来なかった。そのうちの1匹が蓮に向けて襲いかかってくる。
「逃げろ!」
遅かった。蓮は身動きを取れずにいる。敵はものすごいスピードで迫っている。他の人にはどうしようも出来なかった。
そう思った瞬間。
「んっ…」
蓮は目を強くとじて縮こまったが痛みを感じない。顔の横を風が通る。
「生きてる…」
蓮は少し安堵しながらすぐさま敵の方に向き直した。
「……!」
敵は記憶の記録されたクリスタルを砕いていた。
「こいつの目的は最初からこれだったのか!」
役目を終えた敵たちは霧のごとく消えてしまった。
「くそっ!」
この世界の根幹に関わるような情報が失われた。一体誰の仕業なのか。
「一旦ここを離れて今のことについて話そう。」
そう言った途端、視界がぼやけ始める。
「また、こんなタイミングで……!」
* * *
「つっ!」
ベットの上で強く拳を握りしめていた。
夢幻交差〜夢幻の守護者から得た力で主人公達が夢幻交錯の謎を解き明かす旅路〜~境界を超えて、運命を紡ぐ~ トリニトロトルエン @arumajiro96
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