第3章
第5話 紫音と影月
いつもと変わらない学校生活を過ごした。そして、放課後、昨日のことについて話し合うために葵と2人で残りの4人を呼びに行った。だが、紫音さんに会うことが出来なかった。
「俺も同じ学年なのに顔に見覚えがないから先生に聞いてみたんだ。そしたら、今年になって転校して来たらしくて、それからまだ一度も登校していないみたいなんだ。」
煌先輩が続けて話した。
「前の学校では、あんまり人間関係が上手くいってなかったみたいで…それで転校してきたんだ。だけど、まだ心配で学校に来れてないんだと思う。」
「……」
紫音さんは前の学校でいじめを受けていた可能性もある。きっと夢の中のあの男とは前の学校が同じだったのだろう。そして、あの男こそが紫音さんを傷つけていた本人に違いない。紫音さんのあの時の反応を思い出すと、あの男のことがとてつもなく許せない。
「あの男、絶対に止めてやる!」
僕は言った。みんなの顔にも怒りがうかがえる。
「あの男の目的は何なんだろうか?」
5人は意見を出し合った。あの男の行為は夢と現実の世界のバランスを崩すことになる。そしたら、現実世界が破滅するかもしれないと夢幻の守護者は言っていた。あの男は現実世界を無くしたいのだろうか?でもそんなことをすれば、彼自身も存在することが出来なくなってしまう。僕達の本体は現実世界にあるのだから。
「全く目的が分からん!」
煌先輩が投げやりに言う。
「分かりませんね。本人に聞いてみるしかなさそうです。」
蓮も考えるのを諦めているようだ。
「紫音さんに聞いてみるのはどうかな?夢出会えるだろうし。」
僕は提案した。しかし、
「紫音さん、嫌な思いしないかな…」
冬華さんが呟く。やはり、みんな同じことを考えていたようだ。でも、ここで聞いておかないと世界が危うい。それと、僕達が聞くことで何か助けになることも出来るかもしれない。
「私と冬華さんで聞いてみるのはどう?女の子同士の方が話しやすいと思うし。」
今は女性陣に頼むしかなかった。
「お願いします。」
結論は夢の中で紫音さんに話を聞くことでまとまった。
* * *
その日の夜も、夢の中で6人は集まった。実際に紫音さんが目の前にいると、みんな会話が続かず、沈黙が流れる。この後質問しようとしていることに気が引けているのだろう。
「あの、紫音さん。話したいことがあって…」
葵が男性陣に向かって目配せする。男たちは静かにその場を離れた。
「紫音さん、昨日の男の人について知っていることとかある?」
「……」
冬華さんの問いかけに紫音さんは答えようとしない。
「無理に話さなくて大丈夫。ただ、もし何かあるなら私達が力になれるかも。だから、少しずつでもいいから話してほしい。」
「ま、前の学校での話なんだけど…」
葵と冬華さんの気持ちを受け取ってか、紫音さんは話し始めた。
「あんまり私、人との付き合いが上手でなくて、それでクラスでもずっとひとりだったの。それで、あの男は私に嫌がらせをするようになってきて…ごめんね、具体的な内容はあんまり言いたくない…」
「ううん、大丈夫だよ。」
葵と冬華さんは静かに頷く。
「前の学校にはもう行けなくなっちゃって転校することになったんだけど、まだトラウマが残ってて学校に行けてなかったの……」
「あの男の名前とか聞いてもいい?」
「
「影月…」
葵は名前を小さく繰り返した。そいつが紫音さんに酷い目を合わせていたのだ。
「影月が何企んでるかわかる?」
「そこまでは分からない……」
やはり、何を企んでいるのかは紫音さんにも分からなかった。ただ、影月がとんでもない悪だということは分かった。
「このこと、あそこの人たちにも話して大丈夫?」
紫音さんは小さく頷く。
「男子たち、戻って来て!」
男たちはこちらへ戻ってきた。葵は紫音さんのことについて話した。
「影月…紫音さんを気づつけた上に、世界までも滅ぼそうとしているのか!」
「絶対に彼を止めなくてはいけませんね。」
男たちも気持ちを燃やしている。
「あいつより早くコアの修復を済ませるぞ!」
煌先輩の発言でみんな気合を入れた。そして2つ目のコアの修復へ向かうのだった。
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