第4話 コアの修復と嫌な予感

「クソっ…」


男に逃げられ、紫音さんはあんな目に遭わされて、6人の間には沈黙した空気が続いた。


「ごめんなさい…」


紫音さんが呟く。


「私、みんなに迷惑かけちゃって、足引っ張っちゃって…」


また泣き出しそうな顔をしている。


「何言ってるんだ、悪いのは全部あの男だ」


「紫音さん、大丈夫です!私達がついてますから!」


煌先輩と葵が元気づける。それでもまた沈黙が続いた。


「……」


紫音さんが顔をあげ、みんなのことを見る。


「私にはこれくらいのことしか出来ませんが…」


集中力を高め、夢響の力を引き出す。紫音さんの手の上にエネルギーの塊が見える。


―♪―


音が響き始める。その音を聞いた途端、緊張感が緩み、張り詰めていた気が安らぐ。その音がひどく懐かしく、安心する音に感じられた。


「ありがとう、紫音さん」


6人は紫音さんの癒音(ゆいん)のおかげで落ち着きを取り戻した。


「さて、この先どうするか」


考えた結果、まず奥の部屋へ入ってみることとなった。あの男はあの部屋で何かをしていたようだし、それが分かればやつの正体が分かるかもしれない。コアもこの先にあるようなので、この先へ進むことで全会一致だった。


先程の緊張感から解かれ、さっきよりもスタスタと歩いていく。だんだんと部屋に近づいてきた。青い光が強く部屋から発しているらしい。


曲がり角まで来て、一旦立ち止まる。慎重に様子を伺いながら、部屋の中へ入っていく。


部屋の中央には青く光を放つ、クリスタルが浮かんでいる。とてつもなく強いエネルギーが放たれているのを感じる。


コアはヒビが入り、かなり破損しているようだ。コアに近づく。


「どうすれば修復できるんだ?」


煌先輩が呟く。僕は直感でコアに向けて夢響のエネルギーを注ぐイメージで集中した。すると、コアのヒビが少しずつ塞がっていく。


「なるほど、どうやら夢響のエネルギーを注ぐことでヒビが直るみたいだ。」


6人はコアを囲むようにして立った。そして、コアに向けてエネルギーを注ぎ始めた。


コアのヒビはどんどん塞がっていく。1分くらいかけてコアは完全に修復した。


「これでひとつ終わりましたね。」


冬華さんがため息混じりに言った。みんなもひと仕事やり終えて、少し緊張感も解けたようだ。6人は雑談をし始めた。だいぶチームワークも確立されてきて、お互いいい関係が築けてきている。


紫音さんにあの男について知っていることがあるのか聞きたかったが、今のこの空気を壊したくなかったので、今はまだ聞かないことにした。あの表情を見た感じ、あまり良い関係ではなさそうだったし…


そんなことを考えながら、ふと、部屋の中央に浮いているコアの方へ視線を向ける。その下に何かの破片のようなものが見える。


近づいてみると、それらの破片は微かに青い光を放っている。


「まさか、破損していたコアの破片か?」


みんなが一斉にこちらを見る。蓮が近づいてきて破片を近くで見ている。


「間違いなくコアの破片だと思います。ただヒビが入っていたのではなく、破片が飛び散っているとなると…」


「誰かがコアを壊そうとしてたってこと?」


葵が嫌な予感を言葉にする。そこにいる全員が同じことを思っていただろう。


「あの男の目的はなんなんだよ……」


みんな沈黙してしまった。あの男は、現実世界が破滅するかもしれないことを分かってやっているのだろうか。


こうなったら気は引けるが、紫音さんに聞いてみる他ない。


「紫音さん、あの……」


そのとき、突然視界がゆがみ始める。


「な、なんだ、」


* * *


気づくと、目の前には部屋の天井が見える。窓からは朝日が差し込んでいる。どうやら、朝になって夢から覚めてしまったらしい。しょうがない。学校に行って、紫音さんに聞くこととしよう。


いつも通り朝の支度をしていた。


「午前7時となりました。天気予報をお伝えします。昨日から各地で異常気象が……」


いつもの時間になり、僕は学校へと向かった。

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