（株）クレーム駆除センター

〈外伝〉 転売ヤー撲滅推進委員会

こいつも

こいつも

こいつも違う

私は自室のパソコンの前に座り

フリマサイトを舐めるように見ていた

あと一人

あと一人摘発すれば私の望みは叶う

品物

アカウント名

アイコンの写真

わずかなヒントに目を凝らし

私の獲物を探す

奴らは必ず痕跡を残す

巧妙に隠れられていると自惚れている隙をつく

奴らは自分たちがどれだけ劣悪であるのか理解していない

求める者にあたえているのだ　と

救世主にでもなったつもりでぬかしやがる

必要以上に蓄え

市場での価値を吊り上げ

本当にそれを求める人をカモにして財を成している

最悪だ

その物に対して愛も無いくせに

あった

これだ

見つけた私の標的

私の運営するECサイトを荒らしまわったうちの一人

また法外な値段で出品している

これで確定した

これで3サイト目

こいつがこれで「商売」をしている証拠が掴めた

―たまたま1回だけ

―つい出来心で

そんな事では済まされない

こういう奴は性根が腐っているから繰り返し同じことをする

そのたびに私のように泣きを見る人間が現れる

こういう奴は徹底的に叩かないと駄目なのだ

私は今やすっかり悪の巣窟と化した自身のECサイトから餌を撒いた

こいつらのせいで普通の客が寄り付かなくなった廃墟

その廃墟にトラップを仕掛ける

―新商品のお知らせ！購入履歴からおすすめの商品情報を配信しています！

私は店舗名義でDMを送る

奴が買いそうな商品を目の前にぶら下げて食いつくのを待つ

奴はうちの店から何回も商品を買っている

入荷の真偽など疑わないだろう

数時間後

用意した商品ページから購入の通知が届いた

食いついた…！

ダミーの商品と恨みを梱包して発想の準備をする

うちの店はスピード配送を売りにしていた

これも奴らにカモにされた一因なのかもしれない

その日のうちに宅配業者に持ち込み

商品発送通知を送信する

これが地獄への切符になると相手は露ほども考えていないだろう

商品到着予定日

私は購入者の自宅へと車で向かう

あれさえ届けてしまえば行く必要はないのだが

様子を伺いたいという私も相当根性が曲がっているのだろう

到着してしばらくしたら宅配業者のトラックがやってきた

購入者の部屋はこのアパートの2階

私は部屋の窓が見える位置に陣取った

宅配業者の人が荷物を運び終え

トラックを出発させてから間もなく

部屋からこの世のと思えない叫び声が上がった

奴の断末魔だ

ほくそ笑んだ次の瞬間

窓に血しぶきが飛んだ

任務完了か

感傷に浸りながら部屋を眺めていると

窓に黒い影が映った

その影は私に手を振ったように見えた

家に戻ると一通のメールが届いていた

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いつも大変お世話になっております。

転売ヤー撲滅推進委員会でございます。

本日は弊社スタッフを現場まで派遣いただきありがとうございます。

お陰様で無事、仕入れができました事お礼申し上げます

これで累計4回のご協力となりましたので、

お約束通り仕入れ商品の一部をお客様に還元させていただきます。

これからも何卒御贔屓に宜しくお願い申し上げます。

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私はメールを読み終え

椅子に深く腰掛けた

これで

これでやっと妹は―

不意に電話が鳴る

母からであった

『夏美のドナー見つかったって

これでやっとあの子助かるよ

間に合ってよかったよ本当にぎりぎりだったから…』

そう言って母は電話口で泣き崩れた

よかったよ

母さん

本当によかった