喪失の絶望

@tdr3

第1話

機微に触れ手の届かない死の影と嘆きの夜に触れた絶望


本当はすべてが夢で幻と嘘でもいいから嘘だと言って


香り立つ花々あふれ彩りと美し過ぎる君の死に顔


火葬炉が美しすぎてかなしくて心ひりひりゆっくりと泣く


長生きが幸せだとは限らない老いることなき遺影の君よ


この苦難乗り越えるため口結び寂寞として心ずぶ濡れ


滝ごとく零れ流れて落ちていく夢も希望も涙もわれも


悲しみに心は全て支配され流るる涙吾は大夕立


たらたらと嘆き悲しむ女々しさの葛藤もつれ哀悼の夜


遠くからサイレンの音聞こえればフラッシュバック鮮明すぎて


受け入れることのできない現実に溜息漏れて夜がかなしい


花冷えの物悲しさに鬱々と白い別れに癒えない思い


吐き出せぬ積もる心の澱たまり混迷の闇絡まりついて


秋彼岸遺影を前に諦念のわれ泣き疲れ終わり続ける


カレンダーめくらぬままに時は過ぎ季節はすでに巡り巡って


君の部屋クローゼットに頭入れ匂い吸い込み思い出し泣き


死者数の変化に比例しない世に地球もろごとどうにでもなれ


気だるげに闇を濃くした夜に溶ける過去のどこかに散らばる私


怯まずに引き返すことできたのか零れた闇に慄然とする


かなしみを脱ぎきれなくて厚着する誰かを待っているような冬

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