第57話 if…… 10
とにかく少女漫画でしかあり得ないんだよ。
だって僕の何処が良いのかさっぱり分からない!
小学生にとってモテる要素、明るい、元気、真面目の三大箇条の内、『真面目』の部分は壊滅的なはずだ。それに中井さんとはほとんど話もしたこと無くクラスメイト以外の接点がない。好かれる理由が思い浮かばない……。
これチョコ貰っても大丈夫なの??
「いや……貰っちゃうのは不味いかもぉ☆」
そうか……。
なら、断るべきって事だね……。
よし、チョコは欲しいけどここは我慢だ。
多分ここでチョコを貰ってしまうとお嫁さん達のチョコが貰えなくなるとか、そういうパターンなんだな? きっと。
「えぇーと……そうじゃなくてぇ☆」
そして時は動き出す……。
光「中井さんごめんね。僕は……」
中井「えっ! 駄目?」
光「うん。駄目なんだ……」
中井「そう……なの? うん。分かった。じゃあ頑張ってみる」
ん? 頑張る??
光「頑張る?」
中井「うん。自分で直接渡してみる……」
んん???
光「これ?」
中井「そうよ……。それ以外に何も無いでしょ? バレンタインデーなんだから」
光「誰に?」
中井「はっ、長谷川君に……」
なるほど。あのチョコは修に用意されていたのだ……。
長谷川はうちのクラスには一人しかいない。
長谷川 修。
僕のマブダチだ。
普段から良く遊んだりしているが、それが当たり前過ぎて僕にとって空気みたいな感じだ。
なるほど、修に自分で渡す自身がないから僕に渡してほしかったのか……。
光「う、うん。頑張ってね」
僕はそう言いながら帰る準備をして教室を出た。
廊下でお嫁さん達が待っててくれたようで、少しホッとした。
結局あのチョコは受け取らなくて正解だったのかもしれない。恐らくお嫁さん達にずっと見られていたであろうから。
詩織「なんで中井さんのチョコ断ったの!?」
???
光「ダメだった??」
詩織「ダメだよぉ! 中井さん頑張ったんだよ! ひかる君にお願いしてもいいか私達に確認までとりにきたんたから!」
光「えぇぇぇ!?」
ギル……。どうやらミッション失敗したらしい。
チョコ貰っちゃダメって言うから断ったのに結局怒られちゃったぞ。
雛「中井さん大丈夫かなぁ?」
なんか僕が悪者みたいな雰囲気になってきた。
今からでも遅くない。
もう一度中井さんに僕が渡すと提案してみよう。
しかし教室に戻り中井さんを探すが見当たらない。
修は?
……修もいない。
光「ちょっと探してくる!」
僕はお嫁さん達に告げると廊下へ飛び出した。
さて、何処へ行った?
そう思いながらまずは下駄箱へ向かう。
下駄箱を確認すると修の靴はまだ置いてある。
修はまだ校舎の中だ。
修はいつも他のクラスの男子と下校している。
修の家は僕の家と反対方向なのだ。
それに……、去年の事を思い出す。
修は去年のバレンタインデーで両手いっぱいのチョコをゲットしていたのだ。
チョコを持ってきた女の子一人一人を丁寧に対応していたから、その時は一人で帰っていた気がする。友達を待たせると悪いから……と、修は誰にでも優しいからモテるのも当たり前だと思う。
だから今年も女の子が騒いでいる所に修はいるはず。
ギル! 近くに女の子だらけの場所無い?
「女の子が多いのはねぇ……二階の方かなぁ?☆」
僕はギルに言われ階段を目指す。
走りながら頭の中で考えた。
あれ? 修の居場所聞いたほうが早くない!?
ギル! ごめん!
修の居場所分かる?
「分かるよ! 多分二階にいる! 女の子もいっぱいいると思うよぉ☆」
やっぱりか。
本当は中井さんの居場所を聞きたいが僕が親しい相手じゃないとギルは人物の個別判断が出来ないのだ。
取りあえず二階へ向かう。
キャッキャと黄色い声が響いている。
アイドルの握手会でも開催しているのかと思わせる賑だ。
遠巻きに修の姿が見える。
そしてチョコを渡し終わった女子がその周りを囲み、順番待ちの列に5人程女子が並んでいた。
その中に中井さんはいないようだった。
しばらく様子を見ていたが中井さんが現れない。
このままだと修が帰ってしまうぞ……。
ギル! やばいぞ!
このままだと中井さんがチョコ渡せなくなってしまう……。
「そうだねぇ。もう一度探してみる?☆」
よし! 探しに行こう!
その場を離れようとした時、廊下の奥から三人の女子がやってくるのが見えた。
あれは……?
中井さんだ!
それに詩織と雛も一緒だ!
詩織達が見つけてくれたのか?
助かった!
どうやら間に合ったようだ。
中井さんは詩織と雛に背中を押され修様ファンクラブの最後尾に並んだ。
そして中井さんの順番になり、なんとか自分の手でチョコを渡すことが出来たようだ。
その途端に中井さんは感極まったのか泣き出しその場に崩れ落ちてしまった。
それを見た詩織と雛が貰い泣きしてしまい、『良かったね!』と泣きながら中井さんを労うのだった。
突然僕の脳裏にある事が蘇る。
ギル……。中井さんだろ?
「何が?☆」
オーラだよ。
「あっ! 思い出してくれたね! 正解!!☆」
やっとここで理解出来た。
ギルの中途半端な助言……。
そのせいでなんか大変になったこと……。
僕が忘れていたのも悪かったと思ったので今回はギルを責めないでおこうかな。
それにしても泣けるぐらい誰かの事を好きになれるって本当に凄いな……。
僕は心の底から中井さんに尊敬の念を込めて『頑張ったね』と小さく呟く。
僕にはまだそこまでの想いを持てないと思ったのだ。
中井さんから僕のゲーム中のオーラに匹敵するようなオーラが薄っすら視えたような気もする……。
いつか僕もそれぐらい好きになれる人が現れるのかなぁ?
「大丈夫! きっと現れるよ☆」
校庭へ出た僕の頬がやんわりと熱くなり太陽の光を感じ目を細める。
視界の全てが赤一色に染まりとても綺麗だった。
鼓動が高鳴り、いつか現れる僕の
何故かそう思えた。
一筋の涙が頬を伝う。
振り返ると詩織と雛がいた。
僕の
助言者Guil 〜〇〇な子供達へ〜 ルシア オールウェイズ ハッピー スピカ @guil
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