米騒動
深海泰史
米騒動
パックごはんのフィルムを剥がす四回に一回ぐらい点線超えて
実家から米を送ると電話あり5キロの米がわたしをめざす
米を炊く利器所有せず傷だらけの天使のような自炊歴ゆえ
米という文字見つめれば四方からこの街攻める軍勢思う
立ち昇る狼煙のごとき蒸気かな戦いの日がふたたび戻る
ひかり、ゆめ、姫と名前を付けられて戦火にもなる熱に踊りぬ
口腔の火傷に耐える なまぬるいものはあなたに吐き出されるよ
飯粒をこぼしてしまう複眼であっても潰れてしまう量なり
タイ米を食べた記憶はJ-POP輝いていた日とともにある
お弁当食べる友達いないので授業の合間に飲んだおにぎり
時間ないからねおにぎりだけでいい敗残兵は母に伝えた
堂々と一人で食べればよかったと大人のわれが今頃言うな
米と交換できる着物はないのですハンバーガーのような服だけ
「減らすのに反対」と書く減反よ二重拘束むかしから好き
炊飯器の内蓋投げるまぼろしのボーダーコリーがすぐ追いかける
しっかりと個性を削いでぼくたちを食べる社会を脚気にします
半ライスばかり頼んで半分のライスはパラレルワールドに去る
米国はアメリカのこと空母にて稲作すれば何万石か
糠のてのひらを持ちたし聖者にはなれないけれど傷つきもせず
でもいつか倒してほしいこの胸に米粉のスノーボールぶつけて
米騒動 深海泰史 @ShinkaiT
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