ほどほどに。

桑鶴七緒

ほどほどに。

私の自宅には両親と弟、九十歳の祖母と一緒に暮らしている。ある日を境に祖母がパソコンに興味を持ち、私がリビングを通り過ぎていこうとするたびにパソコンの使い方についてやたらと聞いてくるようになった。


「このボタンは何?」

「ああマウスね。右クリックで新しいタブを開けるよ」


「この丸い窓みたいなのは何?」

「カメラ。こうすると……ほら、ばあちゃんも写っているよ」


「この赤いしるしのようなのは何かい?」

「録画ボタンだね。……あのさ、祖母ちゃん何しようとしているの?」

「今度教える」


そして、一週間後茶の間からガンガン音楽をかけて弟と騒いでいる声が漏れてきたのでそっとふすまを開けると、パソコンを見ながら何かの動画を撮影しているのが伺えた。


そして祖母は音楽に合わせながら腰を振りまくっている。


「これでよし。ああ、楽しいねぇ」

「ねぇ、いったいこの間から何やっているの?」

「Vtuber。色々キャラクターが選べてマイクに向かって話すと、生配信をしているとどんどん見てくれている人がコメントしてくるのよ。ボケ防止になっていいわね、これ」

「これから何になりたいの?」

「イケてる婆さんよ。あんたも一緒にやりましょう。お友達増やせるわ」

「そんなに面白いの?まあやってみてもいいよ」

「ほら、今のうちに好きなキャラクターここから選んで。二人とも、これからもよろしくね」


私よりも進化している祖母に脱帽しそうだ。


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ほどほどに。 桑鶴七緒 @hyesu

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