七夕
三夏ふみ
七夕
「落ちる夢を見るの」
彼女はそう言って煙草に火を付けた。
六畳一間の狭い部屋に、彼女の吐いた煙が漂って消える。
「ねぇ。貴方はどんな夢を見たの?」
夢なんか見ないと答えたら、そう、とだけ返された。
何気なく見た窓の外は、分厚い雲に覆われている。
「ねぇ、知ってる?七夕に雨が多いわけ」
さあね。彼女から登る煙をゆっくりと目で追ってから、少し覗き込むように緑がかった黒い瞳に答える。
「だってやっと会えたのに、二人っきりになれないなんて、そんなの嫌じゃない」
そう笑った唇がキスをする。
さあね。
僕はその苦い唇に、つぶやいた。
七夕 三夏ふみ @BUNZI
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