⑥
「ポチタぁ、時間ねーぜ?」
「ワフ!」
飛び起きるようにしておれたちは家を出た。
悪魔を狩っても狩っても借金返済には間に合わなかった。でもやるしかねえ。
おれとポチタが殺せるのは安い悪魔だけだった。なんでかっつーと値の張る悪魔はつええからだ。まあそりゃそーだよな。誰でも簡単に悪魔をぶっ殺して売れるならこのご時世、誰もまともに働きゃしない。自分の命を天秤に乗せてどっちに傾くかを賭けるから報酬が得られるのだ。
「………どうだ。あいつ、やれそーか?」
ポチタのセンサーで探し当てた悪魔。おれはそっとポチタに囁き掛ける。
「クゥーン」
自信なさげなポチタ。
「よおし、じゃあ他のやつまた探そーぜ」
別にポチタはわるくねえ。その場をあとにした。
ポチタはきっと弱いのだろう。
初めて出会った時、瀕死だったポチタはおれの与えた血ですっかりその傷が癒えた。だがその丸っこく愛らしい見た目は全然、変わらなかった。悪魔と呼ぶにはちと迫力が足りない。でもいーんだ。
相変わらず金は無かった。
その日の朝も水道水に食パンを浸して飲み込んだだけ。悪魔を探す途中、足元がふらついた。大したもん食べてないのにポチタに血を与えすぎた。
(でもよお………)
誰かが隣りで朝、一緒に目覚めてくれるっつーのはすげーいいことだぜ。
街へ下りる。ポチタのセンサーを頼りに悪魔を探し回る。頭からちょこんと突き出たチェンソー、そいつで悪魔を一刀両断する。
「こないだ倒したのがじゃがいもの悪魔だろー?」
おれは指を一つ折り数えた。
「んで、その前が人参」
ポチタが「ワウ」と返事をした。
「で、その前がなんだっけ………? 玉ねぎの悪魔?」
デンジは三つ指を折った。
「今度はなんなんだろーなあ、ポチタ………カレーの悪魔かあ?」
笑った。
悪魔を一体、倒せば大体、数十万。
結構な稼ぎだ。
「あー、腹減ったな。悪魔でもなんでもいいからカレーが食いてえよなあ」
「ワフ!」ポチタも同意だ。
ご機嫌のポチタが急に顔を曇らせた。何かおれにはわからないものを感じ取ったのだろう。
「………悪魔か?」
こくっと頷くポチタ。
「よっしゃあ、人参、玉ねぎ、じゃがいもとくりゃあ次はカレーだよな」
ぬいぐるみみたいなポチタを抱き抱え、悪魔がいるという民家、目掛けて走り出した。
アーリーデイズ 雨矢健太郎 @tkmdajgtma
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