第六話・再びの闇の教室

 その日の深夜、西条誠と藍原翔はひっそりとした西皇子学園の二年B組に入っていた。もちろん暗闇である。闇と言うのは確かに不気味である、何か人でないものもその中にある。人は時にそれに魅了される

 翔は教室の真ん中にじっと立ちつくしていた。その眼は閉じている。何か近寄りがたい雰囲気を出している。まさしく青白い光のようなものが翔の体から発せられているのだ。


 誠はオーラというのが、これかもしれないと思った。その光は徐々に大きくなっていく、それにつれて翔の顔に汗が浮かび小刻みに体が震えてきた。


 ついに光が教室の全体を覆った時、翔の眼がパッと開いた。そして「上だ」と天井を指した。


「上?」と誠が聞いた

「西条、電球のソケットを見てくれ」

「ソケット?」

 翔は黙って頷いた。誠は机に駆け上がると天井の電球のソケットを見た。

「それは、多分監視カメラだ」翔がそう云うと誠は驚愕した。

「監視カメラ! マジかよ!

 誠がソケットを取ってよく見ると確かに四つある電球の真ん中にレンズらしき物がある。


「確かに!」

「多分、あと二つある」

「何だって」

「西条、カメラだ」と翔は誠に云った。

「カメラで写真を撮れ」

 誠はうんと頷き、ソケットの中身を携帯のカメラで撮った。


「後は盗聴器だ」

「何!」

「コンセントだ」

 何! 翔は教室の隅にあるコンセントを指した。誠はあきれたように呟く。「今度は盗聴器かよ」

「そうだ」

「さすがにコンセントの中は見られないな」

「ああ」と答えると翔はがっくりと膝をついた。全身に玉の汗をかいているようだ。

「藍原、大丈夫か」誠が聞くと、

「やっぱり情報が少ないと疲れる。西条、ソケットを元に戻してくれ。そうしたらここを出る。肩を貸してくれ」と翔は誠に云った。

 誠はソケットを元に戻して机から降りた。机と椅子を元に戻して翔に肩を貸すと二人は教室を出た。


 グラウンドにでると、野球部用に設置されたベンチに二人は座った。初春の夜空が広がり、宙天に満月だ。その時の汗だくの翔が何か月の光を浴びて、煌々しく見えた。


「大丈夫か?」誠が声を掛けた。

「まあ、やっとかな」

「超能力も大変だな」まったく、これまで超能力を使って、カンニングしほうだいって言うのも大変浅はかな考えと分かる、翔を見ていると、超能力者ってのは重い荷物と言う気がする。みたくないものから逃げれないと言うのは、大変不健康だ。

「言ったろ、肉体的に負担がかかるって。寿命が縮む」


「しかし盗聴に監視カメラとはね。たまげたぜ」と誠がため息を吐いた。まったく、この学校はどうかしてるぜ。

「スト―カ―に盗聴、盗視がつきもんだ」

「どのくらいあるだろうな」

「カメラは教室に三つ、廊下、トイレ、体育館、とにかく電球のあるところは全部怪しい。盗聴はコンセントのあるところだ。いくつあるか分からない、そしてそれらをコントロールするPCがあるはずだ。多分学校内だと思う」


 誠は二度目のため息を吐いた、そしてハッとした。

「盗聴器やカメラは夜も使えるのか?」

「ああ、多分」

「じゃ、俺たちも気づかれたって事じゃないか!」

「それなら、それでいい」


 それでいい! 誠は驚いた。

「何故?」

「俺たちを見たことで必ずリアクションがあるはずだ」

「学校側に話した方がいいんじゃないか」

 誠の言葉に翔は少し微笑むと、首を横に振った。

「学校に知らせたとする。すると学校は調べるだろう、しかしその結果を学生に話すことは無い」

 

 誠がちょっと不満そうに云った。

「お前がそれを読めばいいだろ」

「テレパシ―で読んでも、学校はとぼけるだけだ。証拠能力は無い」

「それじゃ、どうする?」

 誠の言葉に翔は答えた。

「きっと敵はなにかを仕掛けてくる」

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神の学園 西田幾(=東雄) @k0005328

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