主人公の少女、白崎榛菜が通う中学校にはある怪談が伝わっている。
それは放課後に学校をさまよっている少女が隣に現れて声を囁くというものだった。
靴ひもがほどけている、誰もいないはずなのに物音がするというような不審な出来事はその少女が引き起こしているのだとされている。
榛菜の身にもあるとき、自分の上靴が無くなっているという事件が起きてしまう。
たまたまそのことを耳にした同じ塾に通っている別の中学の男の子、黒川凛太郎と灰野晶は興味を覚えて、事件の解決に乗り出すのだが……。
中学生の少年少女たちが、学校で起こった事件を解決する青春ミステリです。
読みやすく、抒情的に展開が描写されているので、スムーズに読み進めることができました。
最初は主人公の身の回りで起こった些細な事件を解決することになるのですが、それらが実は十年前のある少女が亡くなった事件に絡んでおり、終盤で伏線が綺麗にまとまっていきます。
切なくもどこか前向きな読後感を味わうことができました。
青春ミステリが好きな方にお薦めです。
中学生というのは微妙な時期だと思います。まだ大人じゃない。でも、子供でもない。そして、この時期はひとりひとりの能力差が最も大きな時期なのではないかと思います。
大人顔負けの思考能力を身につけている子、如才ないコミュニケーション能力を持った子、大人を信じず良い子を演じきれる子、率直な感情をぶつけて大人をたじろがせる子。
塾で出会った中学生四人が、放課後に中学校の校舎を彷徨う『となりに立つ少女』の噂を知り、男子生徒ふたりがその正体を暴きます。さらに四人がおのおのの能力を発揮し、そこに隠されていた十年前のとある事件の真相にたどり着いてしまいます。
真相を知った彼らは幸せだったのでしょうか? 事件解決後、彼らは再びその他大勢の中学生に戻り、学校に行き、部活に出て、塾に通い、一歩一歩大人への道を歩んでいくのでしょう。
謎解きの鮮やかさに目を奪われると同時に、まだ青春の扉すら開いていない彼らの愚直なまでの真摯さに胸を打たれます。読みごたえのある一作です。