ホラージャンルの作品をお探しの方へ

おすすめ作品①

「異形『怪』道中」(作者:森林公園)

https://kakuyomu.jp/works/1177354055088226366


~橘 紀里さんによるレビュー~

【ひとこと紹介】

闇に潜むのは物の怪か、それとも——?


【レビュー本文】

 元軍医の忠治と、その元部下の島根、そして書生として忠治の家で暮らす千太郎。島根の持ち込む「人ならざるモノ」が関わっていそうな奇妙な事件を巡る、昭和初期の混沌とどこか郷愁を感じさせる妖しくも美しい怪異譚。


 重厚な描写はもとより、飄々とした、それでもどこか闇を感じさせる忠治さん、彼に執着する俳優のように美しい島根と、忠治さんを慕うが故に島根を邪険に扱う千太郎の三人のやりとりは軽妙で思わずニヤリとしてしまいます。


 そして、各話しっかりと練りこまれた怪異譚は、ただの怪談では終わらず、人の闇と情念が深く関わる事件の謎が解ける時、儚い自然や海などの風景を織り込んでその悲しみなどの心の機微を表現する鮮やかな描写にうっとりとしてしまいます。


 少しずつ明かされる登場人物たちの過去や秘密が気になり目が離せません。

 幾重にも絡まる人と闇の怪しい物語。


 おすすめです!


おすすめ作品②

「亡郷の血」(作者:小谷杏子)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428423976984


~陽澄すずめさんによるレビュー~

【ひとこと紹介】

記憶を喰うか、肉体を喰われるか。人の遺志を辿った先の、恐ろしき神の意思


【レビュー本文】

最初から最後まで夢中で読み耽りました。


移植手術を受けた人間が、知らない記憶によって殺人衝動に目覚め、人智を越えた力で凄絶な死を遂げる。

何が起きているのか、何に襲われているのか、息をもつかせぬ展開に、読む手が止まりませんでした。


メインの二人、椎羅と絵莉が非常に魅力的です。

事件に巻き込まれて死んだ父親の追っていた謎を引き継いだ絵莉と。

彼の死に際の言葉に従い、絵莉を危険から遠ざけようとする椎羅。

行動派で世間ずれした感じの絵莉も、ドライでコミュニケーションが下手な椎羅も、抱える闇の深いこと。

一人の男の遺志によって繋がった二人の距離感が、ものすごく好みでした。


移植者たちの視界を共有できる椎羅の目を使って異常現象を追ううち、ある島で崇められていたモノの存在が見えてきます。

人の尊厳を踏み躙るような悍ましい因習。かつてそこで何が行われていたのか、明かされる衝撃の真実。

読了後も、胸の中に恐ろしいものが巣喰っているような感覚が抜けません。私も何か移植された気分です……


非常に面白かったです。

リーダビリティの高い文章もさすが。文字を追っているだけで楽しかったです。

とても充実した読書時間でした!


おすすめ作品③

「厨子の祝宴」(作者:武州青嵐(さくら青嵐))

https://kakuyomu.jp/works/16816700426575664852


~雲江斬太さんによるレビュー~

【ひとこと紹介】

手順通りに執り行わないと、恐ろしいことが起こる……


【レビュー本文】

 山深い村。といっても、そこには電気もあるし、水道ある。スマホだって使える。急病人がいれば、ヘリだって飛んでくる。

 でも、ただひとつ。

 そこには、他の村にはない、ちょっとかわった因習があったのだ。


 四年に一度、村に伝わる厨子を祭り、その厨子をつぎの家に渡す……。



 帰省していた志摩は、入院している祖母のかわりに、このちょっと変わった祝宴を取り仕切る。

「厨子の祝宴」。

 それはつつがなく終了するのだが、つぎの当番家が厨子の受け入れをことわってきた。


「もうこんなこと、やめないか」

 そして、その夜から、怪異が始まるのだった。



 村に残る因習。それには村の暗い過去と怨念が絡んでいた。そして、その過去も怨念も、いまだ消えてはいない。そう、決して消えてしまうものではないのだ。

 時がたち、加害者が忘れたとしても、罪も罰も消えてなくなったりはしないのである。


 村に受け継がれる怨念と因習。志摩は幼馴染の奏斗とともに、怪異を止めるために動き出す。

 そして、知るのだ。この村にまつわる忌まわしくも恐ろしい過去を。



 だが、村に伝わるのは、怨念と暗い過去ばかりでは決してなかった。

 果たして彼らはその謎を解き、根深き怨念の連鎖を解くことができるのか?



 これはホラーだが、本作では恐怖は少し自重されています。恐怖と恋愛と社会問題。それらがほどよくバランス調整された深い物語になっています。

 怖いのが苦手な人でも安心して読める。


 が、夜に読むことは勧めない。

 特に、風の強い夜は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る