第6話
シーナこと私は十五年前に生まれた。しかし私は父のことを覚えていなかった。なぜなら私が生まれてすぐ出張に行ったらしかったからだ。でも母はものすごく優しく綺麗な人だった。元々、母は高位貴族だったそうなのでそれなりの財産と土地は持っていて、私はそこで家政婦さんと母といっしょに育った。別に父に会いたいという感情はなくて、母のために役に立ちたいという気持ちが大きかった。母に一度なぜ高位貴族なのか聞いたことがある。でもいくら聞いてもきちんと答えてくれなかったのを私は今でも覚えている。当時の私は子供だったから話しずらい事でもあったのかもしれないと思い、今でもあまり聞かないことにしている。でもやはり気になるものは気になるものだ。私はいろんな手を使ってその答えを見出そうとしていたが、結局何も見つからなかった。家政婦さんにも聞いてみたけど知らないと言われた。収穫があったといえば一度だけ普段優しい母と違う顔を見た事があった。
それは私が、母が高位貴族である理由を探し始めて一週間くらいのことだった。その日の夕方、何も見つからなくて、そろそろ母が帰ってきそうだったので探すのをやめて、家政婦さんと一緒に母を出迎えに行こうとした。でも家にやってきたのは母だけじゃなかった。門の前に母の正面に立つ偉そうな服を着た人が立っていたのだ。このことに関しては、話を邪魔しては行けないと思い、あまり近くには寄らなかった。偉そうな人と話している途中、突然母が怖い顔になり、近くじゃなくても母の圧が伝わってきて、いつもと違う母に恐怖を感じて体がすくんでしまった。ただ怖いというのではなく本能としての恐怖を感じた。その様子に偉そうな人も怖くなったようで急に適当に話をあしらって帰ってしまった。そのこと以外は母のことが大好きだ、子供の頃から今でも。一番好きだったのは物語を読んでくれたことだった。その中でも母が読み聞かせてくれる賢者の話が私は好きだった。
賢者とは物語上に出てくる魔法使いのトップである。だからといって物語にしか実在しないわけではなく、魔法界序列一位の人に与えられるのが賢者という称号でもある。物語上の賢者と魔法界序列一位である賢者は同一人物なのか分からないが、賢者が好きなのでいつかは序列一位の賢者に会ってみたいとは思っている。だから私はたくさん魔法を勉強して使えるようになって「神童」とまで呼ばれるようになったのだ。
神童と呼ばれてすぐに父が出張から帰ってきた。最初はあまり喋ることはなかったが今ではたくさん話している。まぁそこまでは色々あったのだが省こう。ここからは魔法の勉強と実践を繰り返して今の神童にたどり着いたってわけだ。私はこれからも、賢者に会いたいという夢を叶えるために頑張っていこうと思う。
滅ビノ王 ぺるしゃむ @zeus-raizin
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