藍の随に生く日々よ

ある年の、思わず息を呑んでしまうほどに晴れ渡った五月十七日。

四方を山々に囲われた長閑な町に暮らす、幼少期に事故で家族を喪った十六歳の少年『深山志絃』はその晩、ふとした事から一筋の光もない奇妙な夜へと迷い込み──そして、そんな暗夜の出口を探す内に辿り着いた古神社で出会った、自らを神様だと名乗る青白い髪の少女、『藍』との契約を切欠として日々の裏側に潜んだ不可思議な世界へと身を投じていく。

「私は、藍──」

「この土地を護る、神様ですっ！」

神様を名乗る存在と、今や何処にも行けない人でなし。僅かな身動きすら取れぬほど、雁字搦めとなるほどに交差し絡まり合った二線の運命は今、辺境の町と幽かな夜を舞台に確かな縁を紡ぎ、喪われた記憶を求めて巡り始める──。