もやしは救世主になり得るのか

秋雨千尋

燃やしマン爆誕

 私は製薬会社の開発チームに所属している。

 総勢百人に満たない弊社だけど、日本全土に広がる伝染病の特効薬の研究に勤しんでいる。いつかうちの製品でみんなを笑顔にしてみせる!


「嘘でしょ……」


 とある大学の研究室より、もやしの栄養素が伝染病に効果抜群であるというデータが持ち込まれた。これを発表されたら、皆がもやしを食べて健康でハッピー! とはなるまい。もやしは物凄く安価。一部の金持ちが日本中から買い占める事だろう。貧しい家計の味方であるもやしを奪われてなるものか。


 そうだ、一部の農家と契約して医薬品◆伝染病に効くもやし◆として高値で販売しよう。本来なら一袋二十円のところを二千円でどうだ。一本あたり十円以上。いかにも効果がありそうだろう


 農家さんは「百倍の値段なんて、本当に売れますかのう」と不安げだが、もう発売日もCMもイメージキャラクター《ビョーキを燃やしマン》も出来た。手に松明を持ったもやしだ。

 後には引けない。お願い、爆死だけは避けてー!



 私は開発チームから出ることになった。



 何故なら◆伝染病に効くもやし◆は爆発的ヒットとなり、燃やしマングッズもバカ売れ中だからだ。すでに五億の利益が出ている。アニメ化も決まり、春から営業部に回って燃やしマンの宣伝に勤しんでいく。

 百人程度だった社員はもやしの値段の如く百倍になり、子会社も増えた。


 もやしの栄養素のおかげだろう、猛威をふるっていた伝染病の感染者が激減したとニュースで見た。それでも皆は買うのをやめない。予防のためもあるし、何よりもシャキシャキとして美味しいからだ。


 皆さんも、もやしで健康になってみませんか。アニメもよろしくお願いします。


 完

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