あっち系の........

最上階でエレベーターを降り咲本さんは部屋の鍵を開けた。


「どうぞどうぞー」


「あー、え........?」


咲本さんはドアを開け俺に中に入るよう促してくれたのだが........


「んー?どうかした?」


「いや、ちょっと........その........」


「なにー?気になるからはっきり言ってよー」


咲本さんは俺の顔をじっと見つめる。


「いや、本当に何もないです........」

俺は黙秘を貫こうとした。

しかし、咲本さんは納得がいかないようだ。

頬を膨らませ唇を尖らせている。


「この家のルールその1!思った事ははっきり伝えること~」


「それ今決めましたよね?」


「そだよ」


「せこくないですか?」


「全く?ほーらー!言わないとこの家住めなくなっちゃうぞー」


「えー、本当に言わないとダメなんですか........」

俺は遠慮気味の視線を咲本さんに送る。

後ろの"アレ”をはやく片付けてくれという意図を含んで。


だが俺の視線の真意を咲本さんが気づくはずもなく........


「はやく言ってよー!」


「その~あの~........俺が見るといろいろ問題がある本が........見えちゃってるんですよ........」

俺は自分の顔に熱を帯びるのを感じながら俯いた。

玄関に積み重ねてある、ちょっぴり大人な本を指さしながら........


「ん?後ろに何か........ふぇ?え、え!?ちょ、ちょっと待って!!」

咲本さんは慌てて俺を部屋から押し出しドアを閉めた。


「ど、どうぞ」

5分ほど経過して顔を真っ赤にした咲本さんがドアを開けた。


「お邪魔します........」


咲本さんはあの本を俺に見られたことを恥ずかしがっているのかリビングへ案内してくれている時も耳まで真っ赤だった。


「うわっ、マジですか。こんなところに一人で住んでるんですよね!?」

流石、高級マンションの最上階........2階があるのはもちろんでシャンデリアにジャグジーにらせん階段までついてるのか........


「う、うん。たまに妹が遊びに来るけど........」

咲本さんは未だに気まずそうに答えた。


俺はなんと声をかけていいのか分からなかった。

だが俺は咲本さんがああいった本を持っていた事を少し安心していた。

嘘か本当かは知らないが近所の兄ちゃんが言っていたのだ。

「ああいう本を持っていない女は男遊びがヤバいぜ(※ド偏見)」と。

持っていなければそれは男に満足している可能性が高く男をとっかえひっかえ、よろしくやっているのだという........(※ド偏見)

つまりああいった本を持っている彼女は男遊びはそれほど酷くはないのだと予想ができるらしい。


まぁ何よりこれから半年共に生活するのだから初日で気まずくなるのは御免だ。俺から咲本さんに声をかけないとな........


さて、ここで俺が彼女にかけるべき言葉は一択だ。

「気にしないでください」がベストアンサーである。


間違っても「気持ち悪い」などという言葉を発してはならないのだ。


俺は何度か脳内シミュレーションを繰り返しキッチンで晩御飯の支度をしている咲本さんに声をかけた。


「あの~さっきの事なんですけど........」


「え!?あ、う、うん」


「もし、俺に見られた事気にしてるんでしたら別に大丈夫ですよ。ちょっとビックリしましたけど........」


「え、ほ、ホント!?軽蔑してない?」

咲本さんは目を見開いて俺に近寄ってくる。俺は咲本さんの圧に押され半歩後ろへ下がった。

「しません、しません!」


「ほんとに?」


「はい。むしろ安心あんし........じゃなくて、まぁ気にしてませんから!」


「そっか........変な物見せちゃってごめんね」


「いえ大丈夫です。俺の友達にも持ってる奴いたので........」


「え、そーなの!?あれ女物なんだよ?」


聞いてもいないのにどちらの性別に向け作られたものかを暴露してくる咲本さんに俺は苦笑いした。


「そ、そうなんですね........」


「うん!はぁー、文哉君の心が広くて良かったよードン引きされてると思った~」咲本さんは安堵したようなため息をつき再び晩御飯の支度を再開した。


「そりゃまぁ驚きましたけどね........」

俺はボソっと呟きリビングに戻った。

そしてソファーに腰を降ろし体を寝そべらせクッションに頭を置いた。


「ん?何か固い........?」

俺は頭を置いてしばらくしてクッションの硬さに違和感を覚えクッションカバーを取った。

すると中からさっきのあっち系の本が3冊出てきたのだ。


「なっ........!?隠すならちゃんと隠してくれよ.......」

俺はため息をつきながらもう一度クッションカバーの中にその本を入れようとしたのだが一冊の本の題名を見て手を止めた。


「可愛い可愛い年下後輩✕✕✕✕✕✕........」

俺は慌てて残りの2冊の本の表紙を見た。


「積極的な弟と✕✕✕✕✕✕✕........近所の高校生との甘い✕✕✕✕✕✕........」


「マジですか........」

さっき咲本さんがドン引きされると思ったと言っていた理由が分かった気がする。

「うん........これはドン引きしますよ........」


明日、俺は生きているだろうか.......

俺は手を擦り合わせ神に祈った........

(何の神に願ったのは分からなかったが)

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姉友~アネトモ~ 夢のまた夢 @hamburger721

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