2023/11/3 夜

 そんでもって続きなんだけど、SNS上で料理合戦をしていると「料理が得意な家庭的な女アピール、太い実家の立派なご馳走アピールしんどいわぁ」みたいなことを陰で言う子もいたりするんだよね。仕方ない、そういう面が全くないかというと、残念ながらそんなことはないもん。しんどい子はしんどいだろうから。

 で、若かりし頃の私は、なんというか、そういう気持ちも拾わなきゃ! っていう、頭の悪い使命感を覚えてしまって。そういう経緯で、めちゃくちゃ失敗した(見た目が悲惨だったが、味は美味しかった。もちろん、完食だ)手作りのお菓子の写真をアップしたのを覚えている。すごく、上から目線だと思う。あえて自分の失敗をひけらかしているつもりだった。そういうタイプの浅ましさってあるよね。当時はそういうの、絶対バレないって思っていたし、実際、その投稿も身内レベルではかなり面白いと話題になった。学校に行けば「あれ何があったのwww」と声をかけられたり、「あの投稿を見て勇気づけられたからお菓子作りに挑戦した」とよくわからない報告を受けたりもした。――そういった反応を見るに、彼らは私の浅ましさに全く気付いていないようだった。同じことを、今ならぜったいにやらないだろう。この年になれば、そういうタイプのあざとさが世の中には存在することを、多くの人が気づいているだろうから。

 さて、前述したとおりその投稿が案外、身内でそれなりにウケてしまって、私は晴れて「料理のできない女」というレッテルが貼られ、その後もイベントの度にそのような投稿を求められるようになってしまった。もちろんモテない。何より面倒くさい。そんなにネタがあるとは限らないからである。


 今となってはリアル関係のSNSはほぼすべて削除し、日常の写真をネットの海に流すこともなくなった。そんな私も、半径3mの範囲内にいる人間の笑顔を見たいがために、イベントごとに乗じて料理を作ってみたり、メイクを変えてみたりする。そういう、いたって純粋な気持ちを手に入れたのがつい最近だってことに驚きを隠せないとともに、手前味噌ながら、まぁ良い感じに成長しているんじゃないかなって思ったりもする。


 ハロウィンの思い出、完。

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