第17話 デスエンジェルスの襲撃
話は健太郎が転生した時間まで遡る。
ジゼル王国の第一王女アンリエッタが拉致され近衛騎士団のうちコンスタンタン率いる第一騎士隊並びに、第二、第三騎士隊が捜索に出たあと手薄になった王城にはデスエンジェルスの魔の手が伸びていた。
王国の東側に聳える高い山脈の裏手側にあるデスエンジェルスのアジトから十八台のバイクに乗った
バイク野郎どもは赤、青、黄色のバンダナを頭や首に巻きグループ分けがされてはいるが統率がとれているようには見えずバラバラに散らばって止まっている。
バンを運転していたサングラスのリーダーらしき男は王城を囲む塀が見えるところで後ろに続くバイク野郎どもに声をかけた。
「いいかよく聞け、野郎ども! お前らがつけているバンダナの色分け通りに動け! 赤は俺についてこい。青は先に走って門を爆破しろ! 黄色は中に入ったら庭を走り回って攪乱だ、分かったか」
拳を振り上げて叫ぶサングラスに対しバイク野郎どものノリは悪く心なしか小さい声で「おー」と返事をした。
「声が小さい! もっと張り上げろ!」
「おー」少し声が大きくなるが覇気は全く感じられない。後ろの方ではコソコソと囁き合っている者たちもいる始末だ。
「おれ、時給がいいから応募したんだけど、城の塀門を爆破するって正気かあいつ? このバイト、ヤバくね?」
「俺も簡単なお仕事で銀貨一枚ってあったから来てみたけどヤバみがすげぇ」
「オレが見たチラシはバイクで走るだけのお仕事って書いてあったぞ」
「「「今すぐバックレてぇ」」」
「おいっ、そこ、話聞いてんのか。って、おい、お前ー」
バイクを二人乗りしている輩に気が付いたリーダーはズカズカと近づいて後ろの座席に座っているガングロのギャルを指さした。
「お前ら誰が二ケツしていいって言ったんだ。後ろの奴は今すぐ降りろ」
指を差された黒ギャルが面倒くさそうに降りながら、
「あーし、ツレに無理くり連れて来られてぇ、バイクの運転できないしぃ」とマスカラで重くなった睫毛をバシバシしながら口をとがらせるとリーダーは頭を抱え、
「誰だ、こんなやつ採用したの、お前か」と後ろでニヤニヤしているモヒカンの頭を殴った。
「俺っちじゃないっすよ。つか、主力は先に拉致した女の方に取られてるから人手が足りないの知ってるじゃないすか。俺っち頑張って求人の募集チラシ作ってあちこち貼りまくって頑張ったのに」
「知るかっ! こんな寄せ集めでどうにかなると思ってるのか、くそ、俺が頑張らないと、って今度は何だ」
リーダーの前で待たされていた黒ギャルが胸を押さえて苦しみだした。
「あーし、胸が超苦しいんだけどぉ。もうダメぇ」
身もだえしている黒ギャルがパンパンになっている革ジャンの前に手をかけると限界まで張り詰めていたボタンがはじけ飛び大きな胸がバイんと飛び出した。
「はぁ、楽になったぁ」
だがしかしTシャツを着ているので残念ながら生身ではなかったがそれを見たリーダーが鼻血をだす。
「お、お前、車の運転はできるか」
「あーし? できるよ」
「よし、お前はバンを運転しろ。俺は横に乗る」
ブー、ブー
ブーイングの嵐が渦巻いたがリーダーは気にも留めずに黒ギャルをバンの運転席に乗せると号令を出した。
「よぉ~し、青バンダナ、先に行って門を爆破しろー」
モヒカンが先に走りその後を青バンダナがついていく、しばらくすると爆発音が轟き悲鳴が上がった。
「よし、次は黄色だ。庭を走り回って攪乱しろ。赤は俺の後からついてこい、左側にある館の入り口を爆破したら三階まで一気に行くぞ」
黄色のバンダナがバイクを走らせるとリーダーはバンの助手席に飛び乗り「あいつらの後を追え」と黒ギャルに命令し言われるままに黒ギャルはアクセルを踏んだ。
塀の前は瓦礫の山になっていて怪我をしている兵もいる。それを見た黒ギャルは
「これガーチャー? ほんまゴメンやで。あーし帰りてぇ」と呟くがリーダーには聞こえなかったようで返事はなかった。
言われたように庭に入ると左側の館に向かって車を走らせる。庭では攪乱要員のバイクが兵士を追いかけたり反対に追われたりしながら文字通り攪乱していた。
バンを止めるとリーダーが降りて館の入り口に手りゅう弾のようなものを投げて壊すとバイク野郎が何台か突っ込んでいく。この辺には兵士が不自然なくらい誰もいなかった。
バンの中で一人待たされている黒ギャルは顔色こそ分からないが眉根を寄せて不安そうな顔でハンドルを握っている。
どのくらい待っただろうか長かったような短かったような実際はあっという間の出来事だっただろう、リーダーの巨体がピンク色の何かを肩に担いで館の入り口からバンに向かって走って来るのが見える。
「マジすか」 黒ギャルは絶句した。
おれは異世界で世紀末の王に……なる の か? ~トラック野郎は我が道を行く~ 日間田葉(ひまだ よう) @himadayo
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