第六十五話 ミスエルフコン

 精霊の森で過ごす日々は、のんびりとして穏やかな暮らしだった。

 エルフたちは、長寿種と呼ばれる種族で他の種族よりもガツガツと慌てている様子はない。


 だが、男性と言う異性に関しては興味があるようで出会えば話しかけてくる。


「マクシム殿、精霊の森はいかがかな?」

「マクシム殿、森は美しいだろ?」

「マクシム殿、だっ、男性はどのような女性が好きだろうか?」


 村の中を歩けば、このように声をかけられる。

 皆が美しく気遣いのできる人たちなので、楽ではある。

 今までいた王国や獣人王国よりも過ごしやすい。


「おや、マクシム殿ではないか」

「エリノア様、おはようございます」

「うむ。どうじゃ? そろそろ村にもなれたのではないか?」

「はは、そうですね。皆さん凄く接しやすくて助かっています」

「ほうほう、それで? 誰か気に入った女子はおったかえ? シールが幸せそうにしているから余計に皆アピールしておるじゃろ?」


 エルフたちは、悪い人たちじゃない。

 獣人と違ってアピールと言っても自らを着飾って、より美しさを強調してくる。家事ができることや、料理が上手いこと、狩りの腕が上手いなど。


 アピールの仕方が控えめで、可愛いと思えてしまう。


 アルファは、エルフたちに料理の仕方を教えてもらい。

 獣人娘娘たちは狩りを習っている。

 リジは魔法と戦闘などの模擬戦を繰り返しているようだ。


「エルフたちにはよくしてもらっているからな。感謝している」

「ふむふむ」

「だから、私ができることはしてもいい」

「ほうほう!!! それは嬉しいのじゃ。では、夕食の時にでもアピールタイムを取らせてはくれんか?」

「アピールタイム?」

「そうじゃ、年頃でマクシム殿に興味をもっておる者たちがアピールをさせて欲しいのじゃ! マクシム様も好意を持たれている女子の方がよかろう?」


 それは助かる。

 ただ、無理やりされていると思う女性を私を好きだと思ってくれている女性の方が大切に思える。


 シールは、私を心から大切にしてくれて世話をしてくれている。


 エルフを大切にすることで、シールが喜んでくれるならそれもありだと思う。


「わかった。夕食の時にお願いします」

「感謝するのじゃ!」


 エリノア様も見た目は美しい女性ではあるが、年齢は一番上になるそうだ。


「皆の者、我々の悲願が達成された。今宵はミスコンじゃ! 祭りの用意をいたせ!」


 エリノア様の叫びにエルフたちは静かに雄叫びをあげて、準備に走って行った。エルフたちの動きは早く、村全体が着飾られて華やかな舞台まで出来上がる。


「レディースエンジェントルメン! やってまいりました。エルフの村でマクシム様に気に入られろ! ミスコンテスト!」


 エルフの村人はそれほど多くない。

 見た目が歳を取らないエルフたちは、年齢が不詳で私には判別もつかない。

 シールのように若く見た目も幼い対応であれば、まだなんとなくわかるのだが、エリノア様は絶世の美女でありながら老人だといわれるので、それも困惑してしまう。


「マクシム様から、気に入った者に子種の提供をもらえる約束を果たした! 各々の美しさを持ってマクシム様の心を射止めるのじゃ!」


 エリノア様の呼びかけに、四人の見た目が美しい女性たちが現れる。


 思っていたよりも少ない人数だったんだな。


「おおっと勘違いしないでもらいたい。マクシム殿! あなたに好意を持っていた者は村の者全員と言ってもいい。じゃが、全員を流石に審査するのは難しい。そこで、マクシム殿に年齢が近く。それでいてエルフとしての魅力が高い者をこちらで選別させてもらった。見た目、能力、愛情、全てを兼ね備えた者だけを残させてもらった」


 確かに並んだ四人は身長や体型は様々ではあるが、全員が美しく、可愛く、それぞれの良さを持つ。


 能力というのはわからないが、なんとなく見たことがある顔ばかりな気もする。


 アルファに家事を教えてくれたエルフ。

 三人娘に狩りを教えてくれたエルフ。

 リシと模擬戦をしてくれたエルフ。

 シールと私の世話をしてくれたエルフ。


 皆、能力という部分を見せてくれたエルフたちだ。


「皆、愛情はマクシム殿も普段の生活で感じてくれたのではないだろうか? 四人とも愛して欲しいと思うが、それはマクシム殿の好みもあると思う。だからこそ知っていて欲しいのじゃ四人のことを」


 エリノア様が優しい顔をして、四人を見つめる。


「家事が得意です。ラビスです」


 アルファとよく一緒にいるエルフは、胸が大きくて優しそうな雰囲気をしたラビス。他のエルフたちがスレンダーな中でふっくらとした柔らかい体型をしている。


「狩りが得意な、リビアだ」


 高身長スレンダーで凛々しい雰囲気としなやかな肢体を持つリビアは、獣人三人娘の世話をしてくれる。


「魔法と戦闘が得意な、カリスよ」


 スレンダーながらも、しっかりとした体をしているカリスはベラのような雰囲気を持つ。魔法と剣が得意なカリスはリシに戦闘を指導してくれている。


「得意はありませんが、なんでもできます! パリスです」


 シールと同じく小柄ではあるが、幼児体型というわけではなく、シールの姉のような感じを受けるパリスは食材や必要な物を持ってきてくれる。


 四人は四人ともいいところがあり、彼女たちの誰を選んでも良いと思います。


 だからこそ、しっかりと判断して大切な人を選びたい。


「では、一人だけ」


 私は四人の中から一人だけを選びました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男女貞操逆転世界で《稀代の悪男》は大海を知る イコ @fhail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ