真祖幼女吸血鬼は平和を望む

紅 蓮也

第1話 末娘は誕生とともに次代の魔王指名される

 この世界は、人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、精霊・妖精族、ドラゴン族、魔族など知性を持った種族がいる。


 食料になったり、ある程度の知能があれば各種族に使役されたりする魔獣や知能が低く各種族を襲う害である魔物、そして魔法が存在する世界である。


 数だけは一番多いが他種族に比べ力も能力も最弱な人族、逆に魔族は力も能力も最強で、その中でも吸血鬼は他種族だけでなく同族の魔族からも最強で最凶な悪の象徴的存在であった。


 吸血鬼は、血を吸い吸血鬼に種を増やしたり、魔眼で洗脳して操ったり戦力にしたりする。


 吸血鬼の中でも桁違いの能力を持ち皇族である真祖吸血鬼。


 真祖の吸血鬼の王は、魔王と世界中から呼ばれており、インバーデッドクロス帝国の皇帝でもある。


 そんな真祖の吸血鬼で歴代最強と言われる現皇帝がアザライト・ヴァン・クロームである。


「生まれたか」


 青みがかった白い肌に赤い瞳、血を吸う為に長く伸びている牙を持ち、端正な顔立ちだが禍々しいオーラを纏っている男性が出産を終えた女性にそう言った。


「はい。アザライトにそっくりな女の子ですよ」


 アザライトと同じく青みがかった白い肌に赤い瞳、血を吸う為に長く伸びている牙を持ち、美麗な容姿のアザライトの妻であり、7人の子持ちであり、皇妃にある女性マリアベルはそう答えた。


「「「おめでとうございます」」」


 アザライトにとって100年ぶりの子供の誕生であり、赤子はアリステラと名付けられた。


「鑑定」


名前:アリステラ・ヴァン・クローム

種族:魔族(真祖の吸血鬼)

年齢:0歳

称号:インバーデッドクロス帝国第3皇女、???、???

レベル:999

体力:∞

魔力:∞

物理攻撃力:∞

物理防御力:∞

魔法攻撃力:∞

魔法防御力:∞

魔法属性:火・水・風・土・雷・氷・光・影・聖・闇・無

スキル:状態異常完全無効、???


 生まれたばかりのアリステラを抱き上げるとアザライトは鑑定魔法をアリステラに使用した。


「!!何と……我でもまだ到達していないのに生まれたばかりの赤子がレベルカンストしておる。体力・魔力、物理・魔法の攻撃力、防御力も∞で現在の我と同じだな。

魔法属性も我と同じ魔族的全属性だけでなく、魔族の天敵属性である聖属性、吸血鬼の天敵属性である光の魔法を使えるのか完全全属性だな。

それにいくつか我の鑑定でも見れぬものもあるな」


「!!……決められましたか」


「危険です。この赤子を今すぐにでも始末しなければですぞ」


 マリアベルは我の気持ちを理解したが、我や我の家族と共に部屋に来た貴族の1人がフザけたことをほざいた。


 マリアベルの言う通りアザライトは血と容姿だけでなく、能力を全て受け継ぎ、更にはアザライトを超える力を持つ末娘アリステラにアザライトは、未来を託すことに決めのだ。


 それより野心が強いが仕事も出来る方だから側近の1人に置いていたが、こやつどうしてくれようか。


「ほう……ケーワイ子爵……生まれたばかりの我の娘を殺すというのか……いい度胸だな」


 愚かな発言をしたケーワイ子爵は、アザライトの殺気に当てられ顔を真っ青にして震えだした。


「申し訳ございません」


 謝ったところでもう遅いわ。1度発した言葉は無かったことに出来ぬのだからな。


 我が言ったアリステラの鑑定結果を聞いておらんかったのか……此奴。


 攻撃力も防御力も我と同じなのだぞ。


「始末すべきと言うならケーワイ子爵……貴様がやってみろ。

赤子を殺すのだ一撃だけで十分だろう」


「……」


「どうした。許可してやったのだ。剣で斬るなり、最も得意な魔法を撃つなりしてみろう」


「しかし……皇帝陛下が抱いたままですと……それに……」


 貴様ごときの攻撃で我に傷を負わせられるわけなかろうが……我が許可しておきながらアリステラを護るために防御結界を張るなどと思ってなどおるまいな。


「我のことを心配してくれているのか?安心しろ貴様程度からの攻撃で我に傷を付けることはできん。

それに許可したのに防御結界でアリステラを護るようなことはせんよ」


「……」


「一撃で始末できたら愚かな発言は不問にしてやる」


「わぁ……わかりました……」


 やらなきゃどうにもならないと諦めか、始末できれば許されるという安堵かケーワイ子爵は決心して我が抱くアリステラに向けて魔法を撃つべく手を前に出した。


「アイスランス」


「ドゴォン!!」


 ケーワイ子爵の放った魔法は私が抱いているアリステラに直撃した。


「キャッキャッキャ」


 結果ははじめからわかっていたことだが魔法攻撃を受けたアリステラは無傷であった。


 それどころか何が楽しかったのか生まれたばかりだというのにキャッキャと声を出して笑っていた。


「失敗のようだな。ケーワイ子爵、今すぐに始末してやりたい気持ちだがそういうわけにもいかんからな。牢で待っているのだな」


 我の命で近衛騎士にケーワイ子爵は牢に連れて行かれた。


「さて、アリステラを我の後継者に指名する。反対の者はいるか?」


 この場にいる国の重鎮たる皇妃、皇子皇女たち、ケーワイ子爵を除く皇帝の側近たちの誰からも反対の声は挙がらなかった。


6人いる兄姉を差し置いてアザライトから後継者指名された生まれたばかりのアリステラは本人の意志に関係なく皇太女となった。


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