箒星

小鷹 りく

箒星



八ヶ月 定期検診 羊水過少 体重過少で救急車にのる



手術台 我が腹の中が 反射に染まり

声の出ぬ子を 見せられ咽ぶ



細い管 いくつも付いた体では触れぬ息子 重さは八百



生きている 確かにこの子は生きている 喉から管が挿されていても 



自発呼吸できぬ息子は良く笑い 生きているよと良く泣いた



煩わしい喉に付けてる命の管 おもちゃがわりに引き抜く危険



磔台 神様この子何かした? 両手吊されまるでジーザス



生き地獄 そんな言葉が脳裏に浮かび謝る母に泣く看護師



退院はいつできますか できません どうしてですか まだ小さい



六ヶ月 同じ問答繰り返し 機械を付けて帰った我が家



アラーム音 サチュレーションが低すぎる それでも見れる我が子の笑顔



増えてきた 体重増加に手を叩く 酸素ボンベもいらなくなった



離乳食 小さいままでたいらげた 一年半で体重三キロ



大丈夫 普通じゃなくても生きている 保育園さえ検討できた



スマホ鳴る 障害児童の受け入れをするので一度面接しましょう



ありがとう 園長先生この次は お試し保育お願いします




その朝に冷たい我が子の体を抱いて 慟哭しながら救急車



もうやめて 心臓叩く救急隊 心拍音は戻らない



親孝行 こんな早くにしなくて良いよ もっと苦労をかけてもいいよ




箒星 流れて浮かぶ 君の顔


家族は今日も元気でいます








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