愛を乞う犬

柊圭介

君だけは

君だけは裏切らないと思ってた目を逸らされる瞬間までは



目が覚めて枕濡れてる午前四時こびりつく夢煙草で流す



大声で吠える奴が羨ましい小心者の歯ぎしりの味



崖に立つ我の背中を後ろから押したお前も一緒に堕ちろ



苦しくなるのは辛い記憶よりも優しい思い出という事実



涼しい顔キメて泳げる白鳥の脚ほど心に筋肉ないから



同情は愛じゃないとかいうけれどそれでもいいからこっちを見てよ



あなたにだけ晒す汚点の傷痕重たかったら見ないふりして



いつまでも仔犬のままじゃいられない苦いミルクを喉に押し込む



どんなに絡みあってももつれあっても声を出しても明日は他人



連絡するよとお決まりのセリフ名前すら覚えてないくせに



文字の裏シラけた顔が透けて見え浮かれた自分のココロを削除



優しくされてフラフラついてく野良犬ドブに落ちるとこまで同じ



自分を弱いと吹聴する花ほど人を刺すのが上手な棘



手のひらをそんなに何度も返したら腱鞘炎になるんじゃないの



愛してくれるなら地獄にだってついていくメンヘラの手負いの獣



ひとのこと嘲笑ってるあんたにも首輪のあとがしっかりついてる



これ以上飼い馴らさないでひとりで生きていけなくなるのが怖い



ありがたや他人様の食い残し誰より栄養つけてやるから



「人生は君と過ごせば美しい」嘘じゃないなら死ぬまで飼って

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛を乞う犬 柊圭介 @labelleforet

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ