第1部 2章 能力試験

入学式の翌日朝7時、男子寮の一室にアラームの音が鳴り響く。アラームの音がなり、枕の横に置いてある携帯のアラームを止めるのは東日本第1戦士育成高等学校1年生の虎城雷音(こじょうらいと)。

 

「もう朝か、全然寝たりねぇ。サボって2度寝でもすっかな」

 

 布団にくるまりながら、携帯の時間を確認し2度寝に入ろうとした瞬間、携帯からメールを知らせる通知音がした。

 通知を確認すると送り主は守武凛だった。雷音と同じ1年生で幼なじみの女の子だ。

 少しめんどくさそうにしながらメールの内容を確認すると、

 

 (凛) 『おはよう雷音! ちゃんと起きてる?』

 (凛) 『能力試験がめんどくさいからってサボっちゃダメだよ!』

 (凛) 『サボったら院長先生に言っちゃうからね?』

 (凛) 『それと、7時15分までに返信がなかったらモーニングコールするから!』

 

 怒涛の勢いでメールが送られて来た。まるで雷音が学校をサボろうとしているのを見透かすかのような内容のメールだ。

 

「朝から相変わらず凄いなあいつは」

 

 何かとめんどう身が良い凛は、孤児院時代から寝起きの悪い雷音の事を起こしてあげたり、身の回りのお世話などを率先して行っていた。孤児院ではその光景が頻繁に見られていた為、先生から雷音の事を頼まれ嬉しそうにしている凛が良く目撃されていた。


「はぁ〜一応返信しておくか」

 

 眠い目をこすりめんどくさそうにしながらも、一応凛へと返事を返す。

 

 

 (雷音)『おはよ、ちゃんと行くよ』

 (凛) 『おっ!ちゃんと起きてる、偉い偉い!』

 (凛) 『今日は戦闘服忘れずにね!』

 (雷音)『了解』

 

 軽くメールを確認した後、携帯をベッドに放り投げ、眠気覚ましにとシャワーを浴びる為に、部屋に備え付けてある風呂場へと向かう。

 15分程でシャワーを浴び終え、歯磨きをしながら制服へと着替える。

 時刻は7時30分前、全ての準備を終えた所で朝食を摂るために寮の食堂へと赴く。

 食堂に着くと、既に朝食を摂っている男子生徒で賑わっていた。雷音の朝食のメニューはフレンチトーストとコーヒーの少し軽めの物にした。

 注文をしカウンターで朝食を受け取り、座れる席を探していると、奥の席の方から雷音を呼ぶ声がした。

 

「おーいこじょー、こっちの席空いてるからこっち来いよ!」

 

 大きい声で雷音を呼ぶのは、同じ1年生の桐生真咲きりゅうまさき。入学式後、寮に帰宅する時間が偶然重なり、その時に知り合った。

 

 入学式後、下校時間が早かった事もあり、同じ1年生だと思い桐生から話しかけたのが始まりだ。

 

「俺は桐生真咲、1年。君も1年生だよね? よろしく! 名前なんて言うの?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 何事も無かったかのように桐生を無視して寮の中へと歩いていく。

 

「ちょちょっ、ちょっと待って!」

 

 咄嗟に雷音の服の裾をつかみ呼び止める。

 さすがの雷音もあまりの勢いで掴まれたので反応せざるを得ず桐生の方を振り向いた。

 

「なんだよ」

「なっ、なんだよって酷いな・・・一応君に話しかけてたんだけど?」

 

 不機嫌そうにしている雷音に対して、少しおどおどしながら再び話しかける。

 

「えーごほんっ。それではもう一度言うよ 俺は桐生真咲、1年。君は?」

「・・・・・・・・・」

「そんな嫌そうな顔しないでくれよ」

「初対面であんな勢い良くこられたら誰だって普通に嫌だろ」

「まぁそれはそうだけど・・・ごめん・・・」

「虎城雷音、1年だ」

 

 少し落ち込む桐生に少し申し訳なく思ったのか、ため息を吐き少し間を置いてから、短くそう伝えたのだ。

 すると、落ち込んでシュンとしていた桐生の顔は瞬く間に明るくなり、嬉しそうに微笑んだ。

 

「よろしくな、虎城!」

「おう」

 

 桐生は右手を勢い良く雷音の方へと差し出し握手をもとめて来た。雷音は少し躊躇したが、差し出された右手を強く握り返した。

 

「ちなみに虎城は何組なんだ? 俺は3組だけど」

「5組だ」

「5組ね了解! 昼飯とかそっちのクラスで食べても良い?」

「勝手にしろ」

「了解、なら昼飯はそっちで食べるわ!」

 

 2人は今後の学校生活の事や入学前の事を話しながら寮の中へと入っていった。ただ、話して居たと言うよりかは、桐生の方から一方的に話しかけており、それに対し雷音が「あぁ」「そうか」など短く返事をするだけだった。

 

 そして現在、桐生に呼ばれた雷音は朝食も持って空いている席へと足を運ぶ。

 席に着くと相変わらずの勢いで桐生から話しかけられた。

 

「なぁ虎城、昨日はちゃんと寝れたか? 俺は今日の能力試験試験が心配で全然寝れなかったよ」

「そうなのか、俺は寝れたが」

「だってよ〜能力試験の結果で今後の学校生活が大きく変わるんだぜ? 結果が良ければ小隊に入れる可能性は上がるし、他校との合同訓練にも優先して参加出来るらしいしよ〜」

「そうなのか」

「相変わらずの塩対応だな、まぁ昨日ので慣れたからいいけど」

 

 朝食を摂りながら今日行われる能力試験の話しをした。

 朝食を平らげ、食器をカウンターへと返しに行く。時刻は8時10分、話が長引いてしまい少し長いしてしまった。ホームルームの開始は時間は8時30分からなので急いで学校へと向かう。徒歩で片道およそ30分なので走って行けばまだ間に合う時間だ。

 ギリギリで学校に到着し桐生と別れた後、自分のクラスへと向かう。

 クラスの扉を明けると、すぐに凛が気づき話しかけてきた。

 

「おっ! やっと来た。遅いから心配したよ。改めておはよう雷音!」

「おう、おはよ」

 

 満面の笑みで雷音に挨拶する凛に、短く返事をし相変わらず元気が良いなと思いながら、凛と離れ自分の席へと着いた。

 雷音が席に着いて直ぐに担任の柊清十郎が教室に入ってきた。

 

「お前ら席に着け、出席の確認するぞ」

 

 先生の言葉を合図に皆自分の席へと戻り、教卓のの方へと視線を向ける。

 クラス全員が教卓の方に視線を向けるのをかくにし柊先生は話し始めた。

 

「さて本日は、昨日も伝えた通り今日一を使い能力試験を行なう。最初が身体測定、その次が適正検査そして体力測定だ。入学して直ぐで強調や不安やらで余計に疲れると思うが頑張ってくれ。それに、戦士を目指しているのなら、能力試験位余裕で終わらせてくれないと後が思いやられちまうぜ。まぁお前たちなら余裕だとは思うがな?」

 

 少しの煽りを混ぜながら今日1日の大まか流れを説明し、ホームルームは終わりついに、能力試験の幕が開かれた。

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狂獣戯画 ばーぼん @bourbon_1031

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