第6話 王都までの道のり
「ところで、サツゥーはどこから来たんだ?」
そう問われた俺が出した答えは。
「遠いところから、来ました」
③ごまかし、問題を先送りにする。を選択した。嘘はついてないけど、じゃあ、どこやねん。と聞かれることが容易に想像できる。
「遠いところねぇ~? どこかの村とか?」
「内緒です」
「え~、気になるな」
「カルオ、その質問はそれぐらいにしておけ」
しつこく聞いてくるカルオに、強面のコワテが助け舟を出してくれた。俺は良かった~と、内心でほっとしていたが、これはカルオが質問をしつつ、相手がこれ以上情報を出さないと判断した場合に、コワテが制止するという尋問方法だった。これにより、コワテが信頼を得つつ、情報もしっかりと聞き出すという手法だ。
「わかったよ。あ、それじゃあ、今食べたい物とかある?」
「そうですね~。ハンバーガーとか?」
「ハンバーガー?」
口から出てハッとしてしまう。この世界にハンバーガーないんじゃね? と。
ここに転移してから、走ったりゴブリンと漫才したり、盗賊やっつけたりと色々なことがあったため、普通の会話に気を配るのを忘れてしまっていた。
「ハンバーガーなら、良い宿してるぜ。王都にいくなら後で紹介するよ」
「え、あ、はい。助かります」
なぜか、ハンバーガーの件はスルーされた。というか、この世界にもあるのか。
そんなことを考えていると、 トゥーメイが馬車から出てきた。
「...お待たせ。待った?」
「いえ、そんな待ってないです」
顔を間近に近づけながら話す。
「...そう。色々感謝する。報酬は王都で」
「あ、ありがとうございます」
「...ミーシャ様から感謝との事」
「そ、そうですか」
トゥーメイはこくりとうなづいた。ごりっと俺の額のライフはもうゼロだ。
この少しの時間に何度も墓穴を掘りまくったことにひやひやし、実際は何倍も長く感じていたため、トゥーメイが戻ってきてくれてほっと安堵した。すると、トゥーメイは緑の騎士に手招きをし、緑の騎士から縄を受け取る。
「...それじゃ、行こ」
トゥーメイは縄で簀巻きにされた俺を脇に抱えたまま乗馬し、馬を走らせる。
あれ? なんかおかしくない? てっきり俺、ご令嬢とあってそこからなんやかんやあるかと思ってた。ないんだ。そういう事。
後ろには、馬車が続いており、その左右にカルオとコワテ、最後尾には、いつの間にかある荷車に、拘束された盗賊たちを乗せて黄と緑の馬が走っている。因みに馬車を操る御者のメイドは、盗賊に襲われていた時に気づけば馬車に移動しており、気づけば御者台で馬の手綱を握っていた。出来るメイドさんだ。
「ところで、ずっと気になってたんですけど」
「...何?」
トゥーメイに抱えられたままで現状に余裕ができた俺はとりあえず、気になった事を聞いてみる。
「どうして、その、フルフェイスの兜を」
「...」
ものすごい圧を感じた。トゥーメイはフルフェイスで無言のままこちらに顔を向けてくる。
「あの」
「......」
フルフェイスのプレッシャーが増す。
「えっと」
「.........」
最初よりも顔が詰め寄ってきている気がする。プレッシャーがさらに増す。
「なんでもないです」
「...そう」
気のせいか、トゥーメイが兜の向こうから安堵のため息をつく。その動作により、額が擦れて痛い。いや、痛いな。思ったよりも痛い。
「あと、王都で働きたいんですけど、どうすればいいですかね」
「...誰でもなれるのは冒険者。スキルがあればギルドがおススメ」
「ギルド、ですか?」
「...そう。魔術師ギルド、剣士ギルド、錬金術ギルド、魔道具ギルドとか他にも色々」
話を聞く限り、スキルがあれば、魔術師や剣士などになれる上に、ギルドに入ればそのスキルアップが出来たり、依頼を受けることで、給金を得るようで専門職といったところだ。冒険者は、スキルがないものや、ギルドに所属していないものがなる職業で、基本的には何でも屋みたいなことをする。その中で、後天的にスキルを取ることが出来るため、ギルドに所属するという流れもある。
「...失礼かもだけど、スキルはある?」
トゥーメイから問われて返答に困る。ツッコミとボケって説明のしようがない。スマホもスキルというより、魔道具になるだろうし。
「あるよりのないです」
「...???」
「ないと思ってもらったほうがいいですね。説明も使い勝手も難しいスキルでして」
「っ!? ...もしかして固有スキル?」
「そうー、なんですかね?」
日本人あるある。とりあえずよくわからないことをなんとなく笑ってごまかす。
固有スキルは、やっぱアレだよな。名前からして一般的なスキルと違って、めっちゃ珍しいスキルみたいな。あんまおおやけにしない方がいい的な。
「...じゃあ冒険者からがいいかも。旅するのは楽しい事とか、出会いや発見がいっぱいあって、でも、苦労や大変なこともあるけど、それも含めて面白いから」
トゥーメイはそういいながら、左手で兜の側面を撫でる。なぜかその仕草は妙にしっくりときて、左耳に髪をかきあげているような光景が見えるようだった。思わず俺が見惚れていると、急な浮遊感が生まれる。
トゥーメイは右手で手綱を、左手で俺を脇に抱えていたため、癖でやってしまったので、無意識に俺を離してしまったのだろう。
「うぉぉぉおおお!」
さて、では先頭から落とされた俺はまず、転がりながら、馬車を引っ張ている馬の脚を避ける。というより、手綱を握っているメイドさんが華麗な馬さばきで避けてくれた。続いて迫りくる車輪。膝を抱えて丸くなることで、車輪同士の間をすり抜ける。
「ダレさん! 前から男の子が!!」
「えぇ~。めんどいよ~。盗賊といっしょに捕まえていいんじゃない?」
「なるほど!」
ごろごろと転がる俺は急に地面から生まれた土のジャンプ台で跳ね上がり、黄と緑の騎士を飛び越え、その二人が引いている荷車に着地する。ギロリと、鋭い目つきで周りの盗賊たちに睨まれる。
それはそうなる。俺がカマセーヌを倒したために結果的に盗賊たちは負けたようなものだ。簀巻きになって、手出しできないとはいえ、その凄みには圧倒される。
「やめときな、部下共。俺のようにボコボコにされたくなければなぁ~」
盗賊たちの中から声がかかり、皆がその人物の為に場所を開ける。その先には、俺がボコボコにしたカマセーヌが簀巻きの状態で座っていた。
ツッコミとボケで無双する異世界転移ってなんやねん さながらサラダバー @sanagarasagara
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