第5話 俺の名は
「「「こわっ!」」」
俺は佐藤 郁斗! コンビだったゴブリンとのコンビ解散をしたあとに、盗賊との戦いでいいとこどりをしてカッコよく女性騎士(フルフェイスの兜をしているが、スタイル的に)を助け、更には大怪我を負った赤青騎士を助けたら、なぜかドン引きされたところだ! 泣けるぜ。
「怖い~...ですかね?」
俺は恐る恐る聞き返してみる。
「...怖い」
おなかを押さえながら即答でフルフェイスの女性は答える。女性騎士がおなかと腕から出血しているのをみて、俺が慌ててどうにか止めようと頭を回転させたが「ヒール」と呟くと掌から緑色の光が発生し、あっという間に、傷口を治してしまう。
え、まさか今のは魔法か。やっぱこの世界には魔法があるんだ。うわ使ってみたい。
「いや~あれはなぁ...」
「うむ、あれは」
「「怖い!」」
すると赤いライトアーマーを来た茶髪のイケメンで、チャラい感じの騎士と少し強面イケメンの青のライトアーマーを着た騎士がぴったりのタイミングで「怖い」を発言する。
「あー...そうですか」
いいとこどりをしてカマセーヌの前に飛び出したが、実際は勇気とヤケクソと勢いとノリとボケのつもりで頑張ったのにそう怖い怖いといわれると少しショックを受ける。泣けるぜ。
ふと、視線を感じ顔を上げると、離れたところで戦っていた盗賊と他の騎士たちもこちらを見ていた。
そんな注目される心構えで来てないから、なんか気恥ずかしいというか、気まずいんだが。
「あ、待て!」
そうしているうちに、カマセーヌがやられたことに気づいた盗賊たちは、簡単に追跡できない様に散り散りなって逃げだした。それに気づいた騎士たちも慌てて追いかけようとするが、蜘蛛の子を散らすように逃げる盗賊たちを一人ずつしか捕まえ切れていなかった。
「...待て」
しかし、フルフェイスの女性はそう呟くと瞬時に一人の盗賊に追いつき、一撃で倒す。が、そこまでが限界のようで残り二人の盗賊たちはうまく森の中に入り込み、その姿が見えなくなってしまった。
スマホのマップを使えば恐らく足取りどころか位置を確認できるだろう。しかし、ツッコミとボケのチートを出した今、最後の切り札は念のため誰にも見せない方がいいと思い隠す。
「あ~、逃げちゃったか~」
「すみません。間に合いませんでした!」
騎士たちがそれぞれ一人ずつ引きずりながら盗賊を纏める。馬車と同じ家紋が入った緑を基調としているライトアーマーを着た騎士は盗賊が逃げられたことを面倒くさそうにしており、同じく家紋が入った黄色を基調としたライトアーマーを着ている騎士がフルフェイスの女性騎士に謝罪をする。
「...いい。仕方ない」
こちらをちらりと見ながら女性騎士がそう返す。フルフェイスの兜を被り、黒を基調としている家紋入りのライトアーマーを着た女性騎士を見ていると、赤の騎士が横から肩をに手を置く。
「まあ、なんにせよ。助かったぜ、ありがとな。俺はカルオだ」
「うむ、感謝する。私はコワテ」
赤の騎士のカルオと青の騎士、コワテはそれぞれ感謝の意を伝えてくれ、それに対して少しだけ嬉しさと気恥ずかしさが出てしまう。
「まぁ、それはそれとして、不審者確保」
「...えっ!?」
肩に置かれた手から強い力で押さえつけれる。反対側の肩もコワテが抑え込む。
なぜ俺が不審者に? と思ったが、客観的に考えてみれば当たり前のことだが、盗賊と戦っているときにタイミングよく現れ、謎の力で盗賊を撃退した上に、もはや助からないと思われた重症の二人を治し、極めつけはこの世界に置いて見慣れない服装をしている。
どこからどう見ても怪しさ百点満点の不審者が出来上がっていた。
俺なにかやっちゃいました?
「...ふぅー。報告しないと。私はトゥーメイ。名前は?」
短く息を吐いた女性騎士のトゥーメイは、フルフェイスの兜をこちらに向ける。それはもう、思い切り間近で、額がごつっと当たってちょっと痛かったくらいに。あまりの圧に負け、口を開く。
「佐藤...です」
「...サトゥー?」
「あ、えーと、佐藤です」
「...サツゥー」
フルフェイスの圧が強いため、癖が強いんじゃ! というツッコミを何とか飲み込み言葉を振り絞る。
そして、日本人あるあるの、違うんだけど、かといって何回もやるのは申し訳なく感じる程度の問題は、まいっか。で済ませてしまう精神が働く。
「あ、はい。それで大丈夫です。」
「...わかった」
トゥーメイが頷いた時にごりっと額がえぐれたような気がするけれど、それをなんとか顔に出さずに歩きだした女性を見送る。
「...クリーン」
すると、トゥーメイは一度馬車に手を伸ばし呟くと、馬車が緑色に発行し、汚れや赤い血が綺麗に消えていった。そのまま中に入っていく。
これ、このままの状態で待たないといけないのか。まさか即刻投獄されて処刑とかないよな。
俺は少し離れたところで、黄の騎士が土の魔法を使い、盗賊たちを縛り上げているのを目撃する。土が盗賊たちの体を締め上げることで簀巻きの状態になっていた。ミシミシという音が聞こえたのは気のせいだろうか。そして、緑の騎士は盗賊の騎士を空間空いた穴に投げ入れていた。恐らくアイテムボックスだろうと予想する。
そんな扱いされた盗賊に比べたら両肩に手を置かれて、動きのけん制をされているだけなのはいい方だろう。
「ところで、サツゥーはどこから来たんだ?」
赤い騎士のカルマが尋ねる。
ついに来てしまったか。異世界転移者あるあるのこの質問&答えによって未来が分岐する展開が。
①転移したことを素直に話す。
②転移したことは伏せる。
もし、①を選択した場合、協力的になってこの世界で色々助けてくれる。政治的、戦い事に利用される。神格化される。ぐらいがありそうだな~。そうなったらめんどくさそ~。
逆に、②を選択した場合、先に来ているであろうクラスメイト達の情報、元の世界の何かしら、物とか食い物とかてがかりを探すのが大変になる。どっちみちめんどくさ~。
さて、どうするか。
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