命一滴 第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト二十句連作部門参加作品

平 健一郎 (たいらけんいちろう)

命一滴

ビール酌む愁ひの紫煙やはらかき


酔芙蓉まどろみ恋ふる夜明けの詩


瀧の音ただ真つ直ぐに恋をせむ


そよ風に懐かしきひと百日紅


凩のさよなら告げず別れけり


命継ぐ雌あり小夜の虫時雨


蓑虫の糸一本に生き遊ぶ


厳粛な枯向日葵よ月に映ゆ


星月夜小さき寝息の昇りゆく


握り飯うまし深空に鷹渡る


パルマ打つ薔薇大輪の恋舞へり


檸檬沁む命一滴まで生きよ


まつくらな花野の底を水奔り


獅子笛や路地に愉楽の秋祭


ひたすらに生きあかつきの曼珠沙華


落鮎や炭火に反りて塩零れ


銀漢に名の無き影となりにけり


角砂糖ふたつ紅茶に黄落期


微熱あり蘭の香満ちて抱きてより


実南天ひとつの恋を鮮明に

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