第4話 クララって何 後編

私の気絶は熱中症として処理された。劇自体はレクの最初の30分で終わり、残り20分は夏休みの諸注意等だったらしい。6時間目終了のチャイムが鳴った。今日は込み学活のはずだ、早くしなければ。目が覚めても止まることがなかった鼻血、こいつのせいで心配性の先生がなかなか離してくれない。心配するなら自分の腹とメイクだろ。耐えきれずに私は机に置いてあったティッシュを丸めて鼻につっこみ、保健室を後にした。

そして今、家や部活に向かうたくさんの視線に刺されながら廊下の歩いている。中央の白タイルを踏み鳴らし、胸を張り、腕を振る。

教室により、名簿を確認してから体育館の扉を勢いよくスライドさせる。

「火焔さん、あの衣装を作ったのは誰?」

良かった、糞どもがいない。

「うぇっ?わっ私?火焔ハララをお呼びですか?」

自分の名前も認識出来ないのか。

「そう、誰なの?」

無駄に露出したバレー部のユニフォーム。膝をつく競技なのだから膝を守れよ。

「えーと、あ!!ウララちゃん!木生、ウララちゃん!だよね。ふぇー、ハララのこと知ってたんだぁ。嬉しい!!」

物理的にも精神的にも急に距離を詰められて気持ちが悪い。今まで私のことなどノリが悪い面倒な陰キャだと思っていたに違いないのに。

「一人称『ハララ』だから。嫌と言うほど聞いたので覚えたわ。で、誰なの?」

人と話してる時にボールをいじるのをやめろ。赤ちゃんかよ。

「あははー、えーと…脚本はね、私が書きました…えへへ」

赤ちゃんだな。

「じゃあキャスティング?って言うのかしら、裏方とかを決めたのはあなたなのね?」

ボールの縫い目をなぞっていた手が少し止まる。

「はい…そう、です」

顔を上げろ、強くそう思った。手が出た。私より少し背が低く、かなり姿勢が悪い火焔ハララの顎を持ち、こちらに傾ける。

「あなた、最高よ」

ボールが弾み、大きな目から涙が溢れ、私の手にまで流れた。

「早くハンカチ出しなさい」

気持ち悪い。

「ごっごめん、わっ私、ハララ、ハララ泣いちゃったよ…嬉しくてハラハラ泣いちゃったよ、えへへ」

ハラハラなんて気品はなくて、ビチャビチャの方が近い状態のハララは短すぎるズボンからハンカチを取り出した。あの、ハンカチを取り出した。

「それよっ!!」

レース地のハンカチは涙を拭くには勿体ない。

「よこしなさい!!」

あなたには勿体ない。力が抜けた手から取る。

「へ?」

近くで見ても粗がない。折るときっちりと角が合う。几帳面なのに美しさで止まらないこの存在感はなんなの?

このカッコよさはなんなの?

「これを作ったのは誰なの?」

ハララは呆然とこちらを見ていた。

「そっそこにタグがあるよ…その子の名前はね…」


『CLARA』


私よりカッコいい、こいつはなんなの?

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CLARA 家猫のノラ @ienekononora0116

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