第6話 ウーヌスの送別会

 日が暮れてきたので、早めの夕食を兼ねたウーヌスの送別会が開かれている。

 皆で手分けして磨いたので、燭台も普段よりも綺麗になっている。

 誰かの誕生月など(わかる者の方が少ないが)お祝いの時のみ歌われる、おめでとうという歌を、皆で嬉しそうに歌っている。

 誰もお金を持っていないので、ウーヌスに渡せる贈り物すら無い。

 前述しているが、退所するにあたってウーヌスに教会側からわずかな支援金が貰えるそうだ。

 支援金は夜遅くに、神父(イニクアという名前らしい)から直接渡されるそうだ。

 ウーヌスには成人の祝いということで、少量の酒が振る舞われている。

 ウーヌスは酒について、こう話をした。

 「退所してから世話になるところで、成人前から酒は飲まされているんだ。

 この程度の酒では酔うはずがないぜ。」

 ウーヌスよりも前に退所した人が何人もいたので、ここで振る舞われる酒の量は解っているそうだ。

 孤児達はお酒を飲んだことが無いため、興味津々のようだった。

 「お酒ってどんな味がするの?」

 パーテとそう年が変わらない女の子フロスがウーヌスに尋ねた。

 「酒の種類によって味は違うぞ。

 苦かったり、辛かったりするな。

 お前らが好きそうな甘いのもあるみたいだぜ。」

 「私、甘いのが良い。」

 パーテが追従する。

 「ぼくも」

 「そうだな。

 金を稼げるようになってから、色々と飲んでみれば良いさ。

 それにしてもこの酒は、舌にピリピリくるぜ。

 さぞ安物の酒なんだろうぜ。」


 皆の食事と送別会が終わり、それぞれがお休みを言い合いながら、寝床に向かうことになった。

 優秀な子供は個別に部屋が与えられるのだが、殆どは数人と共有になっている。

 蝋燭の灯りにもお金がかかるので、食後になって寝る準備ができたら、消灯することになっている。

 後は、日がのぼったらウーヌスを見送るだけとなった。

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